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05/14/2001


ガイアナでございます
その1 着いちゃった


「とんでもないところに来ちゃった」。
ガイアナに到着して数十分後、わたしは心のなかでつぶやいた。もしかすると、声に出てたかもしれない。

出発前に情報収集したが、思うように集まらなかった。出発直前に『地球の歩き方』を図書館で借りて、コピーしたつもりだったけど、してなかった。到着時、手元にあったのは、ネットでゲットした英語のカンタンな資料だけ。首都ジョージタウン、滝、国立公園・・・、ひと通り見どころが書いてある。でもね、国の「感触」がつかめかった。ガイアナに行く前に滞在したトリニダードで、ともだちに訊ねてみたけど、芳しい反応じゃなかった。

「ジョージタウンは、確かにコロニアルな町ではあるけれど、きれいとは言い難い」

「ガイアナの海はあまり美しいとは、いえない。すばらしいのは、森だ」

そう、ガイアナ到着前後のキーワードは「ない」だった。きれいじゃない、情報ない、日本大使館ない(*注1)、ともだちいない、治安よくない、日本人観光客こない・・・。

トリニダードからガイアナに向かう飛行機で、隣りに座ったのは、「人生形成における最も重要な時期、5歳から17歳までをガイアナで過ごしたカナダ人のおじさん」だった。ふたりの子供に、自分の育った国を見せるため、「森のなかでキャンプ」をするという。これ幸い!とばかりに、わたしは彼に怒涛の質問を浴びせた。生のガイアナの感触をつかむために・・・。で、ひと通りの基礎知識を得た。何より、「ガイアナが好きな人」と話せたことで、妙に安心できた。

話し終わって、飛行機の窓から外をふと見て、うわあ・・・。熱帯雨林が厚く積み重なるジャングルが延々と広がり、赤茶色の水が流れる、うねうねした大河が横たわっていた。いつか、アマゾン川上空を飛んだときに、見た風景。そう、ここまで来て、やっとわかったのだ。「森」とは、ジャングルのことだった、と。(遅すぎる)。

イミグレーションは、とてもきびしかった。愛想のかけらもない女性職員が、矢継ぎ早に質問する。「どこに泊まるんだ」、「ともだちはいるのか」、「誰が迎えにくるのか」、「誰も迎えに来ないのに、どうやってホテルに行くのか」、エトセトラ、エトセトラ。リターンチケットを見せて、やっと開放。彼女は、力に任せて入国スタンプを押した。

先を急いでいたので、パスポートは確認しなかったが、出国時にあることが発覚する。1週間後のリターンチケットを見せたにもかかわらず、彼女、3日分の滞在許可しか出してなかったの。出国時の係員は理性があったので、問題なく出国できたけど・・・。急いでいても、パスポードのスタンプは、チェックしておいたほうがいいかもね。ま、知らないほうが、幸せってこともあるけど。

わたしは、けっこうムカついた状態で、首都ジョージタウンの空港の待合室に出た。しかも!その日は日曜日。インフォも銀行も、み〜んな閉まってた。待ってたのは、(あやしげな)タクシー・ドライバーたちだけ。強烈なラブ・コール?をふり払ったものの、どうするあてもないので、とりあえず一服することにした。が、打たれ強いタクシー・ドライバーがひとり、いた。その名は、シャフェーク(SHAFEEK)。なんとなく、いい人のような気がしたので、彼のタクシーに乗ることにした。町まで25USドルのところ(言い値)を、20ドルに値切ってみた。(まだ、余裕あり)。

「タバコはボクのクルマで吸っていいよ」

町に続く一本道を、クルマはひた走った。牛、馬、にわとりなどがあちゃこちゃにいる、素朴な田園風景が続く。シャフェークによると、文字通りの一本道で、空港とジョージタウンを結ぶ道は、これしかないという。30分近く走って、やっと町らしい地域に着いた。と思ったら、「工事中、迂回せよ」の看板、クルマは、裏道へと入った。

う〜ん、やばい。思わずクルマのロックを確認した。窓も閉めた。だって、かなりきてるんだもん。確かに木造のコロニアルな家はたくさんあるけれど、このあたりのすべての家は、月日と共に朽ちていくのを、そのままにしている。

ホテルだけは、ネットでバッチリ調べておいた。それだけが、心のよりどころだった。予約はしなかったけど、当たりはつけておいたの。しかし、シャフェークは、別のホテルのほうがいい!と断言した。現地人にそう言われると、そのほうがいいかも・・・って、思っちゃうのね。意志、弱い? で、彼のお薦め、ウッドバインホテルに泊まることにした。ホテルに着く直前、シャフェークは、言った。

「町の中心は、あっちだ。中心地に行くときは、必ず、メインストリートを通ること。反対側の道は、通っちゃダメだよ。いいね」

ホテルはクラシックな雰囲気、その名の通りウッディな作りで、しっとり落ち着いた感じ。ウッドバインって、「スイカズラ」のことなのね。町の中心にほど近く、首相官邸の真ん前に位置していた。な〜んていうと、高級ホテルかと思うでしょ? 実は3つ星クラスで、1泊(交渉して)40ドル。なんてったって、小さな町だしね、朝はにわとりの鳴き声で目が覚めました。ガイアナだって、高級ホテルは、1泊80〜90USドルくらいします(ガイアナホテル事情、近日公開予定)。

ホテルの部屋に入り、チャンネルをまわす型の古〜いテレビをつけると、あら、ビックリ!『踊るマハラジャ』状態だった。インド歌謡のミュージック・クリップが、流れている。後になって知ったことだが、ガイアナはインド系の人口がとっても多いのだ(*注2)。そういえば、シャフェークもインド系で、クルマには、インド人女優のステッカーが貼ってあったっけ。これも後になって知ったことだけど、ガイアナでは、インド文化を大切に守っている。公用語は英語だが、ヒンドゥー語、ウルドゥー語など、インド系の言葉も使われているのだ。

テレビを見ているうちに、たいへんなことに気がついた。なんと!2週間後に、大統領選が行われるという。途上国の大統領選前というのは、治安が乱れがちな時期で、旅行者にとって、いいことはあまりない。あらら・・・。

テレビ見て、途方に暮れていても仕方ない。まだ日も高かったので、散歩することにした。ホテルのフロントに行き、散歩に行く!と告げると、ガイアナ人のおねえさんが言った。

「泥棒に気をつけるのよ。暗くなる前に、戻っていらっしゃい」。

さあて、わたしの運命はいかに?

*ここまで読んでくれた方へ。だからって、ガイアナはとんでもない国だ!って思わないでね。このあと、エキゾチックなジョージタウン散策+ガイアナのすばらしい自然が登場します。


関連リンク ジョージタウンの写真


注1 正確には、ベネズエラの日本大使館が、ガイアナとスリナムの日本大使館を兼括しています。

注2 外務省の資料によると、ガイアナのインド系人口比率は、51%となっています。
 


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