大連慕情→ハルビン行き インデックス | ||||
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大連に出発する2〜3日前、コンビニで小銭を探していて、指触りが違う硬貨があることに気づいた。旅行から帰ってきて、現地のコインがおさいぶの中に混じっていたときの、あの違和感・・・。 家に帰って見てみたら、穴が開いてない五円玉だった。どこでもらったんだろう??? 国会議事堂の絵柄、日本國、昭和24年の文字。その五円玉は、タイムスリップの入口なのか、それとも・・・。 大連から帰ってきて、実家に行き、両親に見せてみた。「これは昔の五円玉だ」と言われて、穴が開いてない五円玉が存在していたことを知った。 「なぜ、大連に行くことにしたの?」 素朴に、ともだちに訊かれて、考えた。その答えは、ついさっき見た夢を、目が覚めてから、現実の世界で、言葉で説明するときみたいに、もどかしい。 日本が作りあげようとした傀儡国家満州。中国人から見れば「偽満州国」。その「国」には、国籍法がなく、国民はひとりもいなかったという。満鉄職員も、開拓農民も、役人も、それぞれ立場は違っても、「日本人」を捨てて「満州人」になろうなんて、誰も考えもしなかったから、国籍法が成立しなかったんだそうだ。 あの時代、大陸に出かけていった人たちは、欲望が渦を巻いていたんだろう。中には、豪快で魅力的な人たちもいただろう。今みたいに、こじんまりと、まとまっちゃわない懐の深い人たち。 太平洋戦争が終わって61年も経つのに、大連にも、ハルビンにも、見果てぬ夢の痕跡が残っていた。「なぜ大連に行くのか?」という問いのひとつの答えは、夢の残骸を探しに行くことだったのかもしれない。 「満州」をきっぱりと否定したうえで、いろいろ考えながら、書き直しながら、書いてみようと思う。断片的なことでも、書いていくうちに、何かがあぶりだされてくるのかもしれない。穴が開いてない五円玉も、大連も、そして足を伸ばしたハルビンも、すべてが未知なんだから。 参考資料 『満州鉄道まぼろし旅行』 川村湊 文春文庫 |
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