ホーム> 60日間のラテンな旅行体験記
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偉大なるフランス文化 |
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以前から何度もフランス語にトライして、そのたびに挫折した。しかし懲りずにまだトライし続けている。それなのに喋れない。なぜだろう? フランス人はフランス語が世界で一番美しい言葉であると、誇りにしているという。確かに美しい言葉だ。だからこそ照れてしまう。 たとえばカフェに入る。 「ボンジュール、ムッシュー、アン・カフェ・シルヴプレ」 などと言わなければいけない。カタカナで書くと雰囲気がでにくいが、コーヒーを頼むだけなのに、体がムズムズとかゆくなってくるような発音をしなければいけない。 やはりフランス語の基本は「気取り」だと思う。イメージングも必要だ。自分がフランス人の「マドモアゼル」あるいは「マダム」になったと呪文をかけ、ちょっと首を斜めに傾け、顎をちょっと突き出すようにして喋り出す。これができればフランス語の第一段階はクリアしたことになるだろう。逆にここで照れたらおしまいである。 そして自信を持つこと、主義主張を明確にすることも欠かせない。曖昧さは許されないのだ。また、母音はあまりはっきり発音しない方が効果が上がるように思われる(母音をはっきり発音するとスペイン語やイタリア語になってしまう)。 わたしの場合、喋り出すときに照れてしまうのがまずいけない。イメージングに取り掛かると我が顔が思い浮かび、失敗する。気取らない性格もマイナスに働いているようだ。はっきりした性格なので、母音もはっきりしてしまう。だから自信が持てない。主義主張は明確だが、そこに至らないうちに厚い壁が立ちはだかっている感じである。 しかしそれでもわたしは、フランス語を喋っている自分をイメージングしながら、NHKの語学講座を見続ける。いつの日かフランスに語学留学するのもいいだろう。生きているうちにフランス語を喋れるようになること、悲願である。
フランス語は複雑でむずかしいし、フランス人もむずかしい人種だと思う。しかしだからこそ魅力的なのだ。
数年前にフランスに行ったとき、駅の切符売場の女性が言った。 当時、ユーレイルパスを使いヨーロッパ旅行をしていたわたしは、たいていどこの国の切符売場でも英語で尋ねていたが、フランスでいきなり英語を喋ったらおこられた。 彼女が言うことは正論である。「英語は喋れるか?」とまず確認するべきだろう。たとえば日本にいる外国人がいきなり英語で話し掛けてきたら、「ここは日本なんだから、日本語を喋りなさい」と言いたくなるかもしれない。しかし言えないのが現実だ。そしてそんなジレンマは日本人だけのものではないだろう。けっこういろんな国を訪れたが、こんなにはっきり諭されたのはこのときだけである。
たった1度の出来事が偶然にもフランスで起こったのか、それとも起こるべくして起こった出来事なのか…?
『ミッション・インポッシブル』にも登場したユーロスターに一度乗ってみようと、パリ北駅に行き、念のためインフォメーションで値段を確認した。もちろん「英語は喋れるか?」と尋ねたうえで…。担当の青年は流暢な英語で返答してくれる。値段の確認を終えたわたしは、「フランス人も国際化したな」なんて僭越なことを考えながら切符売場へと向かった。甘かった。 「ユーロスターは炎上事故のため不通。はっきりした復旧のメドはたっていない」 切符売場では別の男性がニベもそう言った(ヨーロッパの大きな駅では、値段や時刻表などについての質問を受けるインフォメーションと、切符売場は別々になっている)。このところニュースをチェックしていなかったので、わたしはユーロトンネルで事故があったことを知らなかったのだ 「あなたは親切ではない」 流暢な英語を喋る青年に言うために、インフォメーションまで戻ろうかと思った。が、彼が自分を正当だと主張する言葉がイメージできたのでやめた。 「しかしあなたは値段のことしか尋ねなかった。もしあなたがユーロトンネルの事故について尋ねたならば、ぼくは答えていた。それがぼくの仕事なのだから」
こんな風に言われたとしたら、わたしは反論するすべを知らない。
「このかゆみ止めを使ってみる?」などと尋ねても、「たいしたことはないから必要ない」という返事が返ってくるのは目に見えている。そのとき、あなたができることは以下の二者択一。
「ぼくはカナダのケベックとか、パリとかが好きなんだ」 ここで彼は少し間を置き、続けた。 「そう、ぼくはフランス語はできないけれど、なぜかぼくが好きな場所はフランス語圏。はっ、はっ、はっ…」 むかし学校で「外国人はごまかし笑いはしない」と教わった。ちゃんと理由を説明するのだと。しかし彼は確かに笑ってごまかしたように思う。そう、ここで笑いたくなる気持ちは、わたしにもよーくわかるのだ。 旅行した時期は1996年10月〜11月です。 |
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