ホーム世紀末な???中南米旅行インデックス ベネズエラ

3/15/1999

神様がいる〜ギアナ高地


「外国人がひとりでギアナ高地に行くの? 高いわよ」

旅行代理店の女性は、そう言って、「フフフ…」と不気味にわらった。で、彼女が調べてくれたところによると…。

2泊3日のギアナ高地ツアーに含まれるもの
往復の飛行機代、(このあたりで)一番ゴージャスなロッジ2泊、食事6食分、ボートツアー、アンヘルの滝(エンジェル・フォール)を見る遊覧飛行、空港とロッジの送迎

これでなんと!!!!! 883ドル!!!!! (ドルってアメリカドルだからね)。今のレートが120円として、10万6000円くらい…。失神しそうなほど高い。

これは外国人がひとり部屋に泊まったときの料金。で、もしベネズエラ人といっしょに行ってふたり部屋に泊まると、ふたりで628ドル。つまりひとり314ドル。

そんな理不尽で不条理なことがあっていいのだろうか。旅行代理店のスタッフも「ホントにひどい話だ。ベネズエラの観光システムはなっとらん」って怒ってたけど、どうしようもない。

あとでいろんな人に尋ねてみたけど、ギアナ高地に関しては「外国人料金倍」なの。ただベネズエラの国籍がなくても、居住証明書(IDENTIFICATION)があれば、ベネズエラ人と同じ料金みたい。なぜ? ギアナ高地は、ベネズエラにとって大事すぎる観光資源だから? でも納得できん。

せっかくここまで来てギアナ高地を見ないで帰るのはつまらない、でも高すぎる…。シェークスピア状態になり、ちょっと考えることにした。で、メールともだちのヘンリー君が、別の旅行代理店にあたってみてくれた。そっちだと、確か…200〜250ドルくらい安かったけど、条件は次の通り。

1 壁と天井はある、でも蚊がいっぱいいるかもしれない「家」で、ハンモックで寝る。
2 その「家」はどうもロケーションがよくないらしくて、空港からのタクシー代が20ドルかかる。
3 その旅行代理店は個人経営。お店はなくてケータイに電話して、ホテルのロビーで打ち合わせをする。

決めては、3の「お店がない」だった。信用できる人なのかわかんないし…ね。それに条件が悪くなるわりには、値段が下がってない。これで半値だったら考えたかも…。翌日、最初の旅行代理店に行き、涙をのんでクレジットカードを差し出した。

ギアナ高地観光の拠点となるのが、カナイマという村。で、飛行機もカナイマ空港に到着するんだけど、この空港にはわら葺のレストハウスみたいなのがあるだけ。ここで国立公園に入る手続きをして、乗客は二手に分かれる。バックパッカー系の若者チームと、比較的年齢が高いチームね。若者たちは「ハンモックで寝るところ」に行き、年齢が高いチームはオープンタイプのバスで、「このあたりで一番ゴージャスなロッジ」に連れていってもらえる。

ロッジには「PLAYA(ビーチ)」って書かれた看板が立っていた。こんなところになぜビーチ…と思ったけど、謎はすぐ解けた。ロッジの前にあるカナイマ湖の湖畔は、白い砂浜状態のまさにビーチ。で、波打ち際の水が赤い。あとでガイドくんに尋ねたら、ミネラルと木の成分が溶けているから…って言ってた。ロッジからは、ウカイマの滝とテーブルマウンテンが一望できて感動の巻。

しかしここでツアーの2日めはフリータイムだったことが発覚。「アンヘルの滝を間近に見れる丸一日のボートツアーがあるけど、いかが?」と薦められる。そう、ツアーに含まれているボートツアーは、たった30分のお手軽ものでした。150ドルの追加料金なんだけど、もう行くしかないよね。こんな秘境に来て、1日じゅうビーチでぼーっとしてるのは、つまらなさすぎる。

ツアー・スケジュール
1日め

お昼過ぎに到着。ブッフェを食べてから、30分のボートツアー。カナイマ湖をボートで走り、ウカイマ、ゴロンドリーナ、アッチャなどの滝に迫る。イタリア人おじさん3人組といっしょだったんだけど、もう明るい!明るい! パンツ(水着)一丁ではしゃぎまくる。でも後になって、うち1人はカラカスで全財産を盗まれていた直後だったってことが判明するんだけど…。

ロッジの近くの村をお散歩。小さな集落だけど、雑貨屋や教会があり、子供たちが遊んでた。

夕方、カナイマ湖、ウカイマの滝、そしてテーブルマウンテンがゆっくりと夕闇に包まれていくのを見て、神々のちからを感じた。暗闇のなか、静かに存在するテーブルマウンテンと満月を見ていると、神様に抱かれているような不思議な感覚に包まれる。

2日め
朝4:30に起こされ、「丸一日ボートツアー」へ出発。まだあたりは真っ暗、満月の明かりに見守られて、ヤマハの超高速ボートで突っ走る。白っぽい月はこわいくらいキレイで、まんまるで、ちょっとルナティックになってくる。スペイン語で月は「LUNA ルナ」。ときに月は人間をアブナイ気持ちにさせる。知り合いで満月になると、ちょっとおかしくなるオヤジがいたっけ…。月、星、テーブルマウンテン、ジャングルがどんどん流れていき、ほんのりと月明かりに染まった川面が波立つ。

2時間くらい走ったころには、すっかり朝。愛想のいい手乗りインコがいる休憩小屋で朝ゴハン。

さらに1時間以上ボートで走ると、アンヘルの滝に向かう山道の入口に到着。で、山登り大会始まる。遠足状態で、登りに登ると、目の前にアンヘルの滝が現われた。切り立った、そびえたつ崖を水がしぶき状になって、まっさかさまに落ちていく。ホントにここには神様がいる…。言葉を失い、半開きの口状態で、しばし滝を見続ける。

この滝は1937年にアメリカ人の冒険家ジェームス・エンジェルさんが発見した…ということになってるが、その前から先住民はこの滝の存在を知っており、彼らの言葉(ペモン語)で、「最も深いところへ落ちていく滝」と呼ばれてたという。

お昼ゴハンは、チキンの丸焼き。さっきまでこのあたりを走っていた鶏を丸焼きにしたらしくて、プルプル新鮮。今まで食べたどんなチキンよりおいしかった。こういうのを「料理人」っていうんだわ…。

またまた高速ボートで走りまくり、ロッジの近くまで戻り、今度は滝くぐり(滝の裏をくぐる)。「水着忘れた」ってガイドくんに言ったら、穴がたくさんあいて「ポンチョ状態になったカッパ」を貸してくれた。下着だけ残して服は全部脱ぎ、そのカッパを着て、いざ滝くぐり!

水が少ない時期だって言ってたけど、けっこうな迫力。岩がツルツル濡れてるので、すべらないようにしなくちゃいけないし、ちょっと油断すると、カッパがはだけてパンツが見えちゃうし、ドビャーンと滝の水は落ちてくるし、忙しい。くぐり抜けて、見晴し台から滝を見ると、充実感もあって妙に偉大に見えちゃったりして…。

晩ゴハンは、同じツアーだったアメリカ人たちとごいっしょ。その中にミュージシャンのおじさんがいて、彼は1か月くらい松本のホテルで演奏していたことがあり、温泉にも入ったという。「日本はすばらしかったよ」と言ってくれました。

次は昨日の30分のボートツアーでいっしょだったイタリア人おじさん3人組とお話しする。「今日のツアーはどうだった? 実はボク、カラカスでお財布を盗られちゃったもんだから、お金がなくて、今日のツアーには行けなかったんだ…」。そう、3人組のうちの1人は、クレジットカードと大量のドルが入ったお財布を盗られちゃったのだ。

で、彼が説明してくれたところによると…。
彼はズボンのお尻ポケットに財布を入れて、地下鉄のエスカレータに乗っていた。
若い女のコが隣りに来て、時計を落としたので、拾ってあげようと前かがみになった(つまりお尻が上を向いた)。
数人の男たちが突然やってきて、彼を取り囲み、ズボンのお尻ポケットに入っていた財布を抜き取って、あっという間に逃げた。

被害にあったのは、カラカスの中心地 PLAZA DE VENEZUELAっていう駅で、わたしが5泊くらいしたホテルがあったところ。治安が悪い場所じゃないし、危険は全然感じなかったけど、観光客はいつも泥棒さんたちにチェックされてて、隙があれば盗まれちゃうってことなのね。

それにしても、彼、全然おちこんでない。さすが、イタリア人!?

3日め〜ツアー最終日
午前中、今度は「アンヘルの滝を空から見よう、遊覧飛行」へ出発! スチュワーデスの女のコによると、この飛行機は55歳。昔のゼロ戦みたいに飛行機の頭が上を向いてるの(今の飛行機って水平でしょ?)。

サービス満点! 希望者は飛行機のキャビンに案内してくれる。キャビンって1回入ってみたかったんだよね。アナログな昔的機材で、いかにも「操縦する」って感じ。で、滝がある崖に接近しつつ、行ったり来たり、行ったり来たり…。あああ…、翼が崖にぶつかりそうだ…。

「ほら、よく見えるでしょ」スチュワーデスの女のコが明るく言う。でもこわくないの?

「だいじょうぶよ。わたしなんか毎日乗ってるんだから…」

そうそう、ここには神様がいるんだもんね。

<ギアナ高地について>
カラカスから飛行機で約1時間40分(シウダ・ボリーバル経由)。世界最古の陸地のひとつテーブルマウンテンや、世界最大の落差(980メートル)を誇るアンヘルの滝(英語でいうと「エンジェル・フォール」)などがあるベネズエラ最大の観光ポイント。


関連リンク
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