ホーム2001年ラテンな旅インデックス ガイアナ

10/01/2001


ガイアナでございます
その4 エメラルド・タワーで、エコな日々

首都ジョージタウンからクルマで1時間ほどのところに、エメラルド・タワーがある(本名は、
Emerald Tower Rainforest Lodge, Madewini)。なんか、ゴージャス+グラマラスなカジノ・リゾートって感じの名前だけど、これが実はジャングル・ロッジ。水道水も、テレビもなく、ラジオも入らない。電気はラジエータで自家発電し、夕方、数時間だけ支給?される。

ジョージタウンから空港に向かう道を左に折れ、しばらく行ってさらに左へ。クルマは、ジャングルへと入っていった。四駆でも何でもないフツーのクルマだったので、ガタガタ震えながら、ゆっくり走る。このあたりは、ディープなジャングルっていうより、軽井沢にちょっと似た雰囲気。そして、すーっと視界が開けた。ジャングルを切り開いて作った、エメラルド・タワーに着いた。

斜面に藁葺き屋根、高床式、木造りのロッジが点在している。プライベート・ロッジなので、1棟まるごとがわたしのもの。何もしない日々が始まった(2泊3日だけど)。

エメラルド・タワーの写真

大きなベランダからは、森が見渡せる。ゆったりした風が吹き抜けていく。さわさわと木々を揺らす、風の音が聴こえる。ああ、風ってこんなに気持ちいい音をたてるんだ。村上春樹の小説にあったよね、『風の歌を聴け』。

お手洗いに行ったら、便器に葉っぱが落ちていた。そのまま流したら、いきなりハネた。カエルだった。夏休みに田舎に遊びに行った、都会の子供になってしまいました。このカエル、かわいかったので、そのままお手洗いに置いておいたら、管理人?のおじさんが部屋に来たとき、外に出した。夜、すっごい声で鳴くらしい。なるほど・・・。

食事は部屋まで持ってきてくれる。午前中にロッジに着き、お昼を食べ、午後から「ビーチ」に出た。ロッジが点在する斜面をちょっと降りたあたりに、茶色い川が流れている。そのほとりに、目にまぶしいほどの白砂のビーチが広がっていた。白砂はこのあたりの特産品なんだそうだ。「ビーチ」が広がっているあたり、川はそこだけ幅が広く、池のようになっている。天然のプール状態。

で、この川、真剣に水が茶色。気温もそんなに高くなかったし(30c弱?)、水も冷たかったし、こんな色だし、ためらったけど、入りました。ヘンかもしれないけど、海ってこわくない。でも「池」は、こわい。河童が出そうで。そんなわけで、すぐ上がりました。ちなみにロッジのトイレやシャワーの水も、この川から引いているので、茶色。

ビーチベッドに戻ろうとすると、あっ!河童が・・・じゃなくて、ガイアナ犬がわたしの場所を占領し、高笑いしていた。ビーチに来てすぐに知り合った、わたしの姿を見ると、まるでデジャヴのように、いきなり駆け寄ってきた、かわいくて愛想いい犬。あら、アタマもよかったのね。満足そうにビーチベッドに座る彼(彼女?)を見て、感心した。いまごろ、また、別の観光客にかわいがってもらってそう。

それから、向田邦子を読んで過ごした。『無名仮名人名簿』。昔読んだ時より、文章が時代がかってるように思った。昭和な文だな・・・って。でも、いまのわたしたちが失っちゃったかもしれない、暖かみがあった。昔の日本の、名もない人々のささやかで人情味溢れるエピソードたち。空を見上げると、雲が流れた。

太陽が低くなったころ、部屋に戻った。ランタンはあるけど、電気はないので、暗くなるのに任せる。ベランダに出て、森を見てた。夕暮れ、少しづつ色が落ちて、闇のなかに森が浮かびあがった。

そうだ!野生のサルが木の枝を渡ってるのを見ました。後で、管理人のおじさんに、「野生のサル見ちゃった!」って興奮して報告したら、「ボクたちもさっき見てて、あなたも見れたかな?って思ってたんだよ」って、言ってくれた。

夕食後。ランタンを消してベッドに入ると、自然界の音が聞こえてきた。いままで聞いたことがない、いろんな音。虫や動物の鳴き声・・・。擬音できない音。カエルの鳴き声は、なんとなくわかった。でもあとはわからない。最初はゾクッとした。木の壁一枚隔てて、得体の知れない生き物が、すぐ側にいるんだって。河童もいるかもしれないって。でも、そのうちすっと力が抜けた。あっ、自然に抱かれてるって。

翌日。午後、ボートに乗ることにした。あの茶色い川ね。いつも食事を持ってきてくれるカルメンという女性が、ボートを漕ぐ。いつもは、超淡々系な彼女、しかしオールを持つと性格一変? たくましく、頼り甲斐のある漕ぎ手に変身した。ゆっくりと、しかし信頼感あるオールさばきで、川を下ったり、上ったり。小さな木製のボートには、少しづつ水が入って来るけど、気にならない。カルメンのお父さんは中国人、お母さんはアメリインディアンだそうだ。日本にも親戚がいるとか・・・。

カルメンのオールさばきに惚れこんで、わたしもいっしょに漕がせてもらった。力をふりしぼらない。自然に逆らわない。そうすると、ほわっと自然が受け入れてくれるような気になる。

川べりで、釣った魚をさばいているインド系の家族がいた。奥さんの爪は、真っピンクのマニキュアでビシッと塗られてた。

カルメンが作ってくれた料理はおいしかったなぁ。ただ、運動量が少なかったのと、このときすでに2週間以上、ブリティッシュ・コロニアル系クレオール料理をほぼ毎食、食べ続けていて、大皿いっぱいに盛られた彼女の傑作を食べ尽くせなかったのが残念だった。いまなら、全部軽〜く食べちゃうのに・・・。

ゴハンの内容は、チキン、ローティ、白身の川魚などなど。魚がおいしかったんだよね〜。朝食だって、卵付きフル・ブレークファストなんだから! ああ、お腹すいた・・・。

さて、このエメラルド・タワーは、8年前に創業したんだそうだ。お客さんは圧倒的にアメリカ人が多く、次が旧宗主国のイギリス、日本人はわたしが初めてだそうだ。初めて!って言われると、妙にうれしくなっちゃうの、やーね。そうそう、台湾からの観光客が、ちょっと前に来たんだって。

ビーチに出る、本を読む、昼寝する、ゴハンを食べる、ボートに乗る、森を見る、自然の音を聴く・・・。贅沢な休日。

不思議だったのは、いつも虫に好まれるのに、ここではほとんど刺されなかったこと。アマゾンではやられたんだけどね。蚊帳があったから? それとも???



関連リンク 
エメラルド・タワーの写真 
アマゾンのジャングル・ロッジのエピソードを読む


注1 ローティ〜トリニダード・トバゴやガイアナの名物、インド系の食べ物。とうもろこしで出来た薄い生地の上に、レンティル(レンズマメ)を砕いて粉状にしたものをしきつめ、その上にもう1枚生地を敷く。その上にチキン、野菜、ビーフ、シュリンプなどの具を置き、風呂敷状態で包み込む。うまい! が、デカい。わたしでさえ、ミニを頼まないと、食べきれなかった。

 


Copy Right (C) Emico Meguro All Rights Reserved.