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1/16/2000 |
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予告された殺人の記録 1987年 フランス=イタリア合作(原題 CRONICA DE UNA MUERTE ANUNCIADA) |
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<物語> あのころ、どこからともなく現れた謎の大金持ちのアメリカ人青年が、村で評判の美人を見初め、ふたりは結婚式を挙げた。しかし、初夜の晩、彼は娘を実家に返しに行く。彼女が処女ではなかったからだ。「相手は誰だ?」。問い詰める娘の双子の兄たち。追いつめられた彼女は、村一番の色男サンティアゴを名指ししてしまう。双子の兄たちは、復讐と名誉挽回のため、彼を殺すことを決心し、行動を起こすのだが・・・。 <不条理> 双子の兄たちも、最初はそれほど本気じゃなかった。誰か止めてくれるだろうと思っていたが、結局、誰も止めてくれなくて、後に引けなくなる。息子を守ろうとした母さえも、最後には扉を閉ざす。そして彼は、公衆の面前で殺される。ギリシャ悲劇のような物語は、空気が重くのしかかる熱帯の湿地を舞台に繰り広げられる。 初夜に処女でなかったことが発覚し、実家に戻されてしまった娘は、その後も独身を通し、何十年もの間、夫になるはずだった「彼」へ宛てた手紙を書き続ける。そして長い年月が過ぎたある日、「彼」は戻ってくる。彼女が書いた何千通もの手紙を紙吹雪のように舞い散らせながら・・・。 果たして彼女の処女を奪ったのは、サンティアゴだったのか? 数十年に渡って「待たなければならなかった」のは、彼女に与えられた罰なのか? 勧善懲悪でわかりやすいアメリカ映画とは対極で、「殺されなくてもいいのに、なぜか殺されてしまう」までの過程を延々と追い、殺される原因になった娘の過去と現在を、時間枠を超えて絡ませる手法は緻密だけど、わかりにくい。でも映像が摩訶不思議な引力に支配されてるから、飽きさせない。 あるところにふわっと浮かんでいるような、こわいほど美しい村。鮮烈すぎる色彩と目を刺すほどにあざやかな白い世界は、この世のものではなく、冥土との接点を暗示しているのかもしれない。死んでいく者と生きる者、生き続ける者たちの苦悩、そして渾然一体となる過去と現在・・・。現実と幻想が交錯するなかで、酒場にたむろする男たちの汗が、妙に生々しく光る。「どこでもないどこか」で展開する「魔術的リアリズム」の世界は、一度知ったら蜜の味、抜け出せなくなるかも・・・。 <エトセトラ> カリブ海沿岸地域では、ヨーロッパとアフリカの文化、カリブ海の国際性、古来から土地土地に根付く神話、寓話などが混ざりあい、独特の文化をつくりだしている。その一方、保守的で閉鎖的な風土が生み出す閉塞感も存在しているんだけど、この映画は、実際にこの地域でロケを行い、風土が持つ「気」を捉えることに成功していると思う。 惜しかったのは、音楽。劇中ではキューバ系ラテンがかかるんだけど、このあたりにはクンビア、バジェナートなど、土地土地の音楽があるの。クンビアはサルサを緩くしたようなダンス系。バジェナートはアコースティックなバラード系、あとトロンボーンやトランペットなど管楽器を取り入れた、メキシコのファンダンゴに似たPORROなどの音楽もある。 この物語は、1951年、原作者ガルシア=マルケスが住んでいた小さな町(スクレ)で、実際に起こった事件が題材になっている。「理解できる」「理解できない」はともかく、一度見ておいて損はない映画です。 予告された殺人の記録
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物語はここから始まる 原作の英語版表紙 |
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<出演者たち> |
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アンソニー・ドロン |
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ルパート・エヴェレット |
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関連リンク この映画の原作者 ガルシア=マルケスについて読む |
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