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12/26/2001

Mecano〜絶対的に存在し続ける強大な力
Updated! 読者からのコメント到着! 01/15/2002

<ときのどこかで>
そのころのスペインは、まだEC(今のEU)に加入して間もなくて、フランコの時代の密かな痕跡だって、探せば残ってたかもしれない。そんなころ、スペインに行った。英語系文化圏以外の外国はほとんど初めて。マドリードに着いてデパートに行ったら、服の売り場で女のひとがタバコを吸ってて、いきなり踏んで消しちゃってビックリした。立ち飲み屋に行っても、タバコはみ〜んな、床に落して、踏んで消した。

サラマンカという町で、スペイン語の学校に行った。学校は古くて、寒かった。町ごと中世にトリップしたようなところ。歴史的建造物の1階がパン屋で、上には人が住んでた。ともだちが住んでたアパートは築100年で、水まわりが悪いって、いつもボヤいてた。

口座を開設しようとした。学校の先生の知り合いの銀行に行くと、「誰々は元気か?」「誰々は元気だ」「じゃあ、xxは元気か?」「うん、xxは元気だ」って、ずっと言ってて、そのうち午後の2時が来て、銀行が閉まる時間になった。「ああ、もう閉店の時間だ。悪いが、明日また来てくれ」って、言われた。

ガウディのサグラダ・ファミリアだって、日本のゼネコンが参入すれば、数年で完成するらしい。

すべてが、カルチャー・ショックだった。でも、好きになった。ぜんぜん違う価値観があったから。

いつもヒマで、めったに列車が通らない線路や、橋を歩いたりした。『スタンド・バイ・ミー』の世界。特に、週末は特にヒマだったから、よく泥棒市場に行った。コピー商品や、日常雑貨、日本じゃとっても着れない服が山積みになってる。そこで、初めてスペインのロックやポップスをみつけた。そのひとつがメカノ。

メカノって・・・
メカノは1980年代を代表するスペインのポップロック系グループ。
ナッチョ・カーノとホセ・マリア・カーノの兄弟と、女性ボーカルのアナ・トローハを加えた3人組、いわゆる「ドリカム編成」ね。デビューは1981年。メカノもスペイン語もぜんぜん知らないひとは、彼らの音を聞くと、「むかしのフレンチ・ポップス?」って訊いたりする。当時、ロカビリー的な垢抜けないロックや、イサベル・パントハみたいな演歌・イン・スペインが幅を効かせてたころ、彼らの音は新鮮だった。

はじめて聴いたアルバムは、"Entre el cielo y el suelo"(空と地のあいだで〜1986年発売)。彼らの音は、タイトル通り、空と地のあいだにあった。だけど、空は低く落ちていて、曇りなの。きれいな曲や、明るいコード進行の曲が多いのに、抑圧されている。そのときはうまく説明できなかったし、いまもそれが的確なのかはわからない。でも、わたしのなかで、彼らの音の抑圧感は、フランコの名残り。フランコの時代に青春を送った彼らの・・・。

メンバーたちはいま、40歳ちょっと。世代はもう少し上だけど、アルモドバルにも、フランコの名残り的抑圧感、あるもんね。

最初は何を歌ってるんだか、ぜんぜんわからなかった。スペイン人のともだちに訊いたりしながら、だんだん歌詞がわかってくると、もっと好きになっていった。宗教的な詞もあるし、神話的ラブ・ストーリーもある。植民地支配を批判した奴隷の歌、自分たちが築いた名声がふっと消えていくかもしれない歌・・・。歌詞が深かった。

わたしが次に聴いたアルバム"Descanso Dominical"に入ってる"Mujer Contra Mujer"(女性x女性)は、レズビアンの歌。ボーカルのアナ・トロハ自身、レズ疑惑があったとか。

最初で最後のライブ>
1991年、何度めかのスペイン滞在で、念願の彼らのライブを見た。ものすごく遅れて、23:00も過ぎたころ、ボーカルのアナは、ゴルチェばりのボンデージ(当時、流行ってたよね)で登場した。それまで、カセットやCDで聴いて、つくりあげてた、わたしのメカノのイメージは、すべて、ガガガーンと崩れ落ちた。すごいんだもん、ぜんぜんソフトじゃなくて、もっと力強い。アナの声も、CDで聞くと、ソフトなんだけど、もっと野太くて、圧倒的な力があった。

これがいままで見たすべてのライブのなかで、いちばん印象的なナンバーワン。これからもいろんなライブを見ると思うけど、このときの彼らを超えるライブはありえないかも・・・。思い入れとか、そういうことを総合してね。その晩、むかしの曲から、あの時点での最新作"Aidalai"に収録されてる曲まで、彼らの演奏は延々続き、ライブは未明、2:00過ぎて、おわった。ちなみに、わたしの好みは、ホセ・マリア。

1991年に発表した"Aidalai"を最後に、彼らは長い充電に入った。1990年代後半になると、メンバーそれぞれがソロ・アルバムを出し始めた。アナ・トローハは、ソロアルバム"Puntos Cardinales"をリリースした。メカノ時代はビシッと、ラテン的に化粧した写真ばっかりだったのに、かつてないほどナチュラルなアナがジャケ写真にうつってた。

1998年に再結成し、新曲を何曲か加えたベスト盤"Ana Jose Nacho"をリリース。でもまた再解散したみたい。わたしが見た"Aidalai"ツアーを最後に、もうライブはやってないらしい。

おもいいれ>
メカノのことはずーっと前から書きたいと思ってた。でも、思い入れが強過ぎて、いろんな思い出が詰まってて、書けなかった。わたしのラテン音楽とのお付き合い、すべては彼らから始まったから? いや、ホントはもっと
深いところで。こういうとき、言葉って無力なんだって思ったりもする。

ここで紹介した彼らのアルバムは、CDNOWで聴いたり、買ったりできます。タワーやHMVでも、何枚か売ってます。

メカノを聴いて、音楽には、何か大切なことを変える力があるって信じるようになった。スペインがどんなに発展しても、彼らが解散しても、再結成しても、再解散しても、メカノはいつもわたしのなかにあって、終わらない。彼らとともに始まったことが、絶対的に存在してるから。

なーんて、ここまで言われて、聴いてみたら、「えっ、こんなもん?」って、あるかもしれない。ま、さらっと聴いてみてね。

スペインのEC加入は1986年、フランコが死去したのは1975年です。



MECANO 1
1986年に発表されたアルバム "Entre El Cielo Y El Suelo" ジャケ写真。彼らの音楽を初めて聴いた、思い出のアルバムです。

特に大好きな曲 Te busque、Me Cuesta Tanto Olvidarte



MECANO 2
1988年に発表されたアルバム "Descanso Dominical" ジャケ写真。これまた思い出いっぱいの1枚。

特に大好きな曲 
La fuerza del destino、Mujer Contra Mujer


MECANO 3
1991年に発表されたアルバム "Aidalai"。このアルバム発表後、彼らは長い充電に入った。

特に大好きな曲 
7 de Septiembre、Naturaleza Muerta


MECANO 4
1998年、7年振りに発表されたアルバム "Ana Jose Nacho"。ベスト曲+新曲数曲・・・という今どきな構成。


ANA TORROJA
2000年に発表された、アナ・トローハ2枚目のソロ・アルバム "Paisaje De Un Sueno"。彼女は最近、ミゲル・ボセとのデュエット曲を発表し、ツアーも行っている。他の2人のメンバー、ホセ・マリアとナッチョも、それぞれソロで活躍中!
関連リンク ビバ!アルモドバル! CDNOWへのリンク 
MECANOサイトへのリンク 



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