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死んでしまったら私のことなんか誰も話さない Nadie Hablara De Nosotras Cuando Hayamos Muerto

10/22/2001
死んでしまったら私のことなんか誰も話さない
壮絶なまでにカッコいい、生きていく女 ビクトリア・アブリル
監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
出演:ビクトリア・アブリル、フェデリコ・ルッピ、ピラル・バルデム他
スペイン映画 1995年 104分



<ストーリー>
闘牛師が低い声で祈りの言葉を繰り返す。歓声に沸く闘牛場、そして次の瞬間・・・。

植物人間になってしまった夫の看病とローンの返済に疲れたグロリア(ビクトリア・アブリル)は、酒に溺れ、何もかも捨ててメキシコへと旅立つ。「幸運を探しに来た」はずだったが、売春婦におちぶれ、挙句の果てに地下組織とその金を奪いに来たグループの抗争に巻き込まれてしまう。

グループのひとりは死に際、地下組織がマネーロンダリングをしている店のリストをグロリアに渡す。「これで幸運を掴めるぜ。この金を奪ってもやつらは公にはできないのさ」。そして言った。「金持ちになったら、オレのこと思い出してくれよ。お袋も死んじまって、お前の他にオレを思い出してくれる人は、誰もいないんだ」。


<そして・・・>
スペインに強制送還させられたグロリアは、姑フリア(ピラール・バルデム)が住むマドリード郊外の団地に戻る。フリアは植物人間になった息子の看病をしながら、ローンを肩代わりしていたのだ。

元共産党員、今は学習塾で細々と生計を立てているフリアは、強い意志と信念、そして優しさをも持ち合わせた女性。グロリアの突然の帰還に戸惑いながら、文句を言いながらも、受け入れる。

「高校の卒業資格だけは取りなさい。自分で働いて生きていくのよ」。

しかしグロリアは、マネーロンダリング・リストに載っていた毛皮店から金を盗む計画を練る。そのころ、メキシコの殺し屋がマドリードに降り立った。リストを持ち逃げしたグロリアを仕留めに来たのだ。

が、彼もまた大きな悩みを抱えていた。娘の病気が一向によくならないのは、長年に渡って彼が犯し続けている「罪」のせいではないかと考えるようになっていたのだ。


<生きていくということ>
原題 "
Nadie Hablara De Nosotras Cuando Hayamos Muerto" の主語は、女性の複数形。「死んでしまったら私達のことなんか誰も話さない」ってことになる。

物語の前半、地下組織と彼らが持つ莫大な資金を盗もうとするグループの抗争場面は、クエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』を彷彿とさせたりもする。でも、その後、もがきながら生きるすべを探すグロリアの「生きざま」を見せつけられて、あぁ、この映画って女性を応援してるんだって、気づく。

何もかも失い、失ったばかりではなく、マイナスからの再スタートを強いられるヒロイン・グロリア。若くもなく、学歴もお金もなく、自分で生きようとする意志にも欠けている。そんな彼女は、姑フリアに助けられ、誰のものでもない自分の人生を見つめ直す。

スペイン語で
Salir Adelante っていうフレーズがある。前向きにとか、イヤなことがあっても次に向かって行くっていうような意味。少なくとも、次へ進もうと必死でもがくことには価値がある。たとえ、他人から見たらつまらないことであっても・・・。

<「罪」とは?>
4年ぶりにこの映画を見直して印象に残ったのは、「罪」の描き方。メキシコ人の殺し屋は、娘の病気がよくならないのは、自分が長年犯してきた「罪」のせいではないかと、考えるようになる。生きていくことと「罪」、そしてその結末を対比させながら見ていくのもいいかもね。

あと、全然関係ないんだけど、行き場を失くしたグロリアが戻るマドリード郊外の団地の風景と日常、なつかしかった・・・。


死んでしまったら私のことなんか誰も話さない 1
日本で公開されたときのポスターになった写真

死んでしまったら私のことなんか誰も話さない 2
主演女優 ビクトリア・アブリル

死んでしまったら私のことなんか誰も話さない 3
ビクトリア・アブリル その2

死んでしまったら私のことなんか誰も話さない 4
右:ビクトリア・アブリル
左:ピラール・バルデムは、ハビエル・バルデムのお母さん!

<出演者たち>
グロリア役 ビクトリア・アブリル
スペインを代表する国際派女優。1959年7月4日、マドリード生まれ。この映画では、特に取柄のない女を、壮絶なまでにカッコよく演じてます。ホントにうまい、ステキ。必死な目の光、特にラストシーンの表情、思い出すだけでゾクゾクものです。
あと、闘牛師のケープの掛け方を教えるところ、凄いよ。

彼女の新作は2002年に公開予定(海外)のスペイン映画
"Sin Noticias de Dios"(神様からのニュースはない)。監督はこの映画と同じアグスティン・ディアス・ヤネス、共演はなんと!ペネロペ・クルス。天国から来た天使(ビクトリア)と地獄から来た天使(ペネロペ)が、ボクサーの魂を救うために地球に降りてくる・・・という物語だとか。これは楽しみ! でも日本で見れるのは、さ来年? スペインに見に行っちゃおうか。

ビクトリア・アブリルの基本情報を読む

姑フリア役 ピラール・バルデム
最近公開された『夜が来る前に』に主演したハビエル・バルデムのお母さんです。長いキャリアを持ち、舞台、映画、TVドラマなど幅広く活動してます。とにかく存在感がすごいんだ!
 現在も活躍中で、昨年(2000年)は2本の映画、TVドラマにも出演しています。

*この映画のビデオは、TSUTAYA など、大規模レンタル店にあります。


関連リンク
ビクトリア・アブリルが主演したアルモドバル映画『ハイヒール』




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