ホーム上海〜魔窟を探して >豫園〜小籠包

01/20/2003


豫園〜小籠包


−2日め−

<饅頭+ワンタン+ゴマだんごの朝食>
宿泊したYMCAは朝食がついていなかったので、通りに出て朝ゴハンを食べることにした。ちょっと歩くと、おいしそーな湯気が立っていて、人が集まっている食堂があった。

そう、今回の旅行で、「湯気」は、大切なキーワードでした。通りのあちこちの食堂や饅頭屋の店先から「湯気」が上がっていると、ついフラフラと近づいていって、肉まんを食べる。何個となく肉まんを食べ続けるうちに、たかだか1個1元(15円くらい)の肉まんでも、おいしいところと、おいしくないところが、はっきりあることを学習した。あと、人だかりね。ちょっと観察して、どのくらい人が集まってくるかも、チェック・ポイント。

言葉がわからないので、肉まんを指差し、指を1本立てる。すると、「違う!違う!」という強い反応が返ってきた。よくよく聞くと(聞いてもわかんないけど)、どうやら、4個セットだと言っているらしい。しかも、4個で1元。それなら、尚、うれしい。そのうえ、おいしい。キリッとした朝の冷気のなか、ホコホコの肉まんを食べるささやかなしあわせ。

後でガイドブックを見てみたら、このあたりは、リーズナブルな下町の美食街で有名なんだそうだ。

これだけじゃ足りないので、次は別の食堂に入ってみた。とにかく言葉がわからないので、食堂に入るときは、壁にメニューが張り出されているところがいいんだよね。食べたいものを指差して、書いてあるお金を払えばいいんだから。「饂飩」みたいな漢字があったので、指差してみたら、出てきたのはワンタンだった。関西風薄味、でもコクあり、塩味スープの小さいワンタン汁が、1.4元。これまた、おいしくいただく、安上がりなわたし。

食堂を出て、ちょっと歩き、デザートは、路上の出店の胡麻ダンゴ。冷たかったけどね、歯ごたえバッチリ、うまーい胡麻ダンゴが、0.8元。満足して、YMCAに戻り、チェックアウト。近くに、鉄道の切符を扱っている「場外みどりの窓口」のようなお店があったので、蘇州行きの切符を買った。上海発の時刻表が張ってあったので、行きの切符は、乗りたい列車の日付、時刻、行き先などを書いた紙を出したら、すぐ買えた。でも、蘇州から上海に戻る列車の時刻表は、見当たらなかった。言葉が通じないのに、蘇州駅の出発時刻を確認するのは、ややこしそう。めんどくさいので、帰りの切符はやめた。上海−蘇州は、ノンストップの列車なら、45分くらいで着くから、席がなければ、立ったままでもいいし。

関連リンク 上海ホテルリスト(YMCAの項目があります)

<デジカメの引退>
昨日、空港からのリムジン・バスを降りてから、ひたすら目指して歩き続けた「大世界」。エキゾで租界的な建物を撮っておこうと、デジカメを取り出したが、電源が入らない。実は、昨日から調子が悪くって、スマート・メディアを抜き差ししながら、なだめたり、すかしたりして、使っていたのだが、いよいよ反応しなくなった。

で、ふと、思い出した。出発前、購入してからちょうど4年になるデジカメをけなしてしまったことを。「最近のデジカメって、1.5秒で起動するんだって!」「16MBのスマート・メディアしか使えないなんて、きびしいよね」などなど。きっと、デジカメは将来を悲観したのだ。それなら、自ら身を引こうと・・・。それにしても、何も上海に着いた翌日に行動を起さなくても・・・と、ちょっとうらめしく思ったけど、これは彼の最初で最後のささやかな復讐。そう思えば、納得。ま、いいか、写真撮るのもけっこうめんどくさいし、今回は写真なし! (そのときはそう決めたけど、結局、すぐに「写ルン」を買った)

昨日と同じ、南京東路経由で外灘(バンド)を通って、昨日予約したホテル、上海大廈に向かう。

<上海大廈>
1930年代の伝説の女スパイ、川島芳子の定宿。外灘一望、レトロでハイソ(!)、すばらしい!!! 詳細は、ホテル・リストへ!

<罵声>
上海大廈から黄江川に沿ってブラブラ歩き、そのまま豫園に行こうかと思ったけど、体力も身のうち。バスに乗ることにした。超満員のバス、入口のステップに乗ったままの態勢で、フロントガラス越しに通り過ぎていく外灘の風景は、スペクタクル。サイコー! 喜びも束の間、豫園のバス停らしき場所に止まり、いざ、お金を払おうとしたら、運の悪いことに、小銭がまったくなかった。恐る恐る10元札を差し出すと、いきなり罵声が飛んだ。声の主はバスのドライバー。要するに、「そんなもん出しやがって、ふざけんな。とっとと降りろ、バカヤロー!!!」的勢い。

「降りろ!」と言ってるのは、わかったけど、それじゃ無賃乗車になっちゃうじゃん。ためらうわたし(って言ったって、ほんの2〜3秒)に、もう一度罵声。乗客の冷たい視線。で、降りた。バスに乗るとき、お釣りが出ないことがあるから、小銭を用意するっていうのは、別に中国だけじゃなくて、いろーんな国で、よくあることだもんね。やっぱ、ちゃんと小銭は持っていなくちゃ。その後は、常に小銭がある状態を心掛けたけど、あるときって、使わないんだよね。マーフィーは死語状態だけど、法則は生きてる。

<豫園>
いよいよ豫園にある南翔饅頭店の小籠包を食べに行こうとするが、すでにとてもお腹が空いていた。もし、お店がすぐに見つからなかったときのために、軽く麺類でも入れておこうと、黄浦江沿いにある鑽石楼の中華系ファースト・フード・センタ(?)を覗いてみた。客席を取り囲むように、屋台風の出店がズラーッと並んでいて、好きなお店で好きな食べ物を買う形式。定食ものもあったが、軽めに辛ラーメンにした。見本は具沢山だったが、実際はややしょぼい。ま、いいか、小籠包が待ってることだし。

この鑽石楼の脇には、金色に輝く、大きな龍の頭がふたつついた黄浦江観光客船が停まっていた。川向こうには、高層ビルとテレビ塔。上海的風景。

大通りから細い道に入り、しばらく歩いていくと、下町っぽい風景が拡がった。もうしばらく歩くと、突然、中国の時代劇の世界に迷いこんだみたい、そこが「豫園商場」だった。租界時代も諸外国の手が入らなかったというこの地区は、明・清代の建物が多く残っている。両脇から歴史的建築物が迫ってくる迫力に圧倒されました。映画のセットっていうか、『千と千尋の神隠し』の雰囲気っぽかったりもする。

ここにも中華系ファースト・フード・センターがあったので、後学のために見てみたら、こっちのほうが、ずーっとおいしそうだった・・・。残念! 近くには、スターバックス・コーヒーもあるんだけど、看板の色調は、ちゃーんと明・清代チックに調和させていた。

南翔饅頭店は、すぐ見つかった。さすがにまだお腹が空いていなかったので、先に豫園の庭園を見ることにする。入口近くのワゴンで、「写ルン」を売っていた。写真はなし!って思ったものの、まったくないのもさびしいので、買うことにした。

高い。肉まんや胡麻だんごが1個1元(約14.5円)、羊の皮のブーツが75元(約1090円)なのに、フラッシュなし27枚撮りの「写ルン」が、なんと!105元(約1520円)もする。東京のディスカウント屋で買えば、フラッシュ付のが500〜600円でしょ。「写ルン」がブーツより高いフシギ・・・。贅沢品とか、観光客向けのモノは高いんだよね。値引き交渉をして、90元まで下げてもらって、お買い上げ。愛想のいいお店のおじさんが、豫園をバックに1枚撮ってくれた。サービスのつもりか、何枚も撮ろうとするんだけど、27枚だからね、すぐなくなっちゃう。続きは遠慮させていただいた。

名庭園、豫園は観光客で溢れかえっていた。日本人ツアー客の近くで、ガイドの説明を聞いたりして。見事に積み重ねられた石は、接着剤などなかった当時、ブタの血とお米などを練り合わせたものを使ったとか。

豫園の奥のほう、白壁の脇を歩いていると、『蘇州夜曲』が頭のなかでグルグルまわりはじめた。人があまりいなかったので、声に出して歌った。たぶん、庭園の池、水のある中国的風景が、東洋のベニスと謳われた蘇州を彷彿とさせたんだと思う。ああ、上海にいるんだ、蘇州もすぐ近くなんだって、改めて、こみあげるものがあった。

<南翔饅頭店>
さて、いよいよ南翔饅頭店の小籠包のお時間。2年間、駐在で上海に住んでいたともだちに、絶対!食べてきて!とハッパをかけられ、意気込んだ。2階は着席のレストランになっていて、1階の外に面した一画ががおみやげコーナーなっている。最初、2階に上がったら、席が空くのを待っているグループがいくつかいた。並ぶっていうんじゃなくて、通路に適当に立っていて、席が空いたら、椅子取りゲーム状態になるようだ。秩序はなさそう。それなら、1階のおみやげコーナーの列に並んだほうが確実かと思い、下へ降りた。後で考えると、この判断は甘かった。

1階のお店の外にできている行列に並んだ。しばらくの間は、ガイドブックを読んでいたので、あまり待つことは気にならなかった。でも、一通り読み終わったとき、列がほとんど前進していたないことに気づいた。これは、手ごわいかも。

上海は寒かった。底冷えがした。駐在のともだちは、「東京と同じくらいの気候よ」と言っていた。ネットか何かでチェックしたら、気温の折れ線グラフが出ていて、ほぼ東京と同じ折れ具合だった。でも、実際は、ずっと寒かった。寒気団が来てたのかもしれないし、同じ時期の東京もいつもより寒かったらしい。偶然、前に日本人の女性3人組みが並んでいたので、お話しすることにした。黙っていると、寒さが倍増・・・。

彼女たちは、上海7日間完全フリーツアーで来ているという。ホテル+空港とホテルの送迎のみがついている。どこのホテルに泊まっているとか、どこへ行ったとか、どこがよかったとか、そんなハナシをしているうちに、列は短くなっていくはずだった。が、ほんの少〜ししか、進まない。ともだちに、あれだけ力強く奨められなかったら、列から抜けていたかもしれない。でも、ある程度の時間並んでしまうと、どうしたって、今更抜けられないって気になるし、脱落していく人はほとんどいない。わたしたちは、辛抱強くひたすら待った。

1時間半くらい待ち、チケットを手にした。このチケットを持っている人だけが、次に蒸し上がる小籠包を買える権利を持つ。列が短くなり、おみやげコーナーに近づいてきて、わかったんだけど、小籠包は1回に24籠しか蒸し上がらない。これだけ人気があるんだから、もっと一気に蒸しちゃえばいいようなもんだけど、お店の方針なんだろう。で、次の小籠包が蒸し上がるまで、10〜15分くらいかかる。なるほど、列が進まないわけだ。1人で4籠くらい買っていく人もけっこういるからね。

このころには、列の前後の中国人のおばちゃんたちとも、運命共同体状態になっていた。何を言っているんだかわかんないけど、ニマニマと微笑みあう。もうすぐ小籠包を手にできる・・・という幸せが、みんなを包んでいた。

わたしたちは、チケットを手に握り締め、おみやげコーナー受付のカウンターに前のめりになって、蒸し上がるのを待っていた。

「もし、ここで、誰かが横入りするとか、何かの間違いで小籠包が蒸し上がらなかった・・・なーんてことになったら、暴動が起きる」。女性3人組みの1人が、ぼそっと言ったのが、おかしかったな。ホント、この幸せを奪おうとする人がいたら、わたしも暴徒になっちゃうもんね。

やっと手にした小籠包に、黒酢を思いっきりかけた。歯に当たるほにゃっとした曖昧な感覚、ジューシーな肉汁がこぼれないように、吸い込む。口の中で、一体となる、皮、肉、肉汁、黒酢・・・。ああ、しあわせ! 女性3人組+わたし、4人で輪になって、満面に笑みを浮かべて小籠包を食べる光景が珍しいのか?地元の人たちが、振り向きながら通り過ぎて行く。3人組の1人が全部食べきれないと言うので、ひとつ手伝って差し上げた。小籠包1人前、16個で8元(約120円)。けっこうなボリュームなんだよね。食べ終わったとき、晴れやかに、「ごちそうさま!」と声を揃えた。

<ダブル・ハッピネス>
彼女たちと別れて、あたりをお散歩した。タバコがなくなったので、下町っぽい商店街の煙草屋を覗いた。せっかくだから、中国のタバコを買おう。お店のおにいさんは、ノリがいい。ちょっと英語が話せたので、「これ、どうかな?」とパッケージを指差して尋ねると、「ベリー・グーッ!」と答える。で、高いタバコになればなるほど、「ベリー・グーッ!!!」の、ボルテージが上がっていく。赤いパッケージ、「喜」という漢字がふたつ横に並んでいるタバコを買った。英語名を「ダブル・ハッピネス」という。


2003年1月現在、1元は、約14.5円です。

 


Copy Right (C) Emico Meguro All Rights Reserved.