ホーム世紀末な???中南米旅行インデックス コロンビア

4/19/1999

土地土地のお話その1 バランキージャ


「ご存知? このあたりの現代的なビルは、みーんな麻薬で得たお金で建てられたのよ」

お世話になったお宅の10階にあるテラスで、ゴージャスに朝食を食べているとき、その人は言った。あらま…。

「スーパーXXXが入ってるショッピング・モール、知ってるでしょ。あの建物の持ち主は、麻薬で得たお金をせっせとスイスの銀行に貯め込んでたの。それが発覚して、今はアメリカの刑務所にいるのよ」

アメリカの刑務所ね…。内政干渉っていうか、大きなお世話だと思うけど…。まあ、それは今度ゆっくり書きましょう。

で、そのビルの持ち主の女性、かなり手広く「ビジネス」してたらしい。バランキージャ唯一の5つ星ホテルも、彼女が所有してたんだけど、そんなことがあったもんだから、国が買い取ったという。

お世話になったお宅は、バランキージャの超山の手地区にあって、「ここってコロンビア?」って感じ。話題のショッピング・モール(ビルの持ち主は捕まったが、現在もちゃーんと営業中)は徒歩数分のところにあるんだけど、ロサンゼルス郊外みたいな雰囲気。これじゃあ、つまらないので、下町に行くことにした。「下町は危ないから行っちゃダメ!」って言った人もいたけど、きれいじゃないところも見とかないとね。

バス停で知り合ったジャネットが、「下町ツアー」の同伴者になった。やっぱ、一人じゃちょっと心細い。コロンビアあたりだと、すぐに「同伴者」が見つかっちゃうの。彼女は数日後にアメリカに旅立つという。旅行じゃなくて、もちろん働くため。ビザも取ったし、あとは出発を待つだけ状態で、弾んでた。

明日からカーニバルが始まる。カーニバルの4日間は、ほとんどのお店が閉まってしまうので、バランキージャの下町は、人でごった返してた。屋台に積み上げられた真っ白なスニーカー、渋滞する道、動かないバスとバスの隙間(30cmくらいしかない)を人がすり抜け、露天商とバスのギリギリの隙間を荷車が通っていく。「こすった」「そんなこと、どうだっていいだろう」とどなりあう声と声、クラクション…。熱気、活気、エネルギー…街は燃えてた。

「集金があるんだけど、いっしょに行く?」

彼女はお酒関係のビジネスをしてて、屋台の飲み屋に安いお酒を売っているらしい。

「わたしの彼はこのあたりで商売するのはやめろって言うんだけどね…」

そう、わたしたちはどんどんディープな下町に入っていった。人影が少なくなり、広い道は全体が黒いタール状態のもので覆われている。ゴミを捨てて、雨が降って、暑くなると、濡れたゴミが腐る。それをそのままにしておくと、ヘドロ状態になっちゃう、そんな感じの匂いもする。

「どう、ちょっとこわい?」

「そんなでもない」と答えたけど、内心は「ちょっと、ヤバイかな」って思ってた。彼女は黒い道をゆっくりと歩いていき、屋台の一杯飲み屋で立ち止まった。「集金よ」と告げると、人相のよくない男のコが、面倒くさそうにお金を取り出し、ゆーっくりと数え始めた。束になった2000ペソ札(約140円)を、1枚、1枚、驚きの遅さで数え、それでも間違えて数え直すもんだから(払うのがイヤなのね)、ホントに日が暮れてきた。

「早くして!」って彼女が言っても、効果なし。ギャー、夜になっちゃう!

「ねえ、ねえ、お嬢さん」

屋台の脇に座り込んでいる酔っ払いの1人が、わたしを呼んだ。お嬢さん(セニョリータ)か…。まだそう呼んでもらえるのは、うれしいわん。でも絡まれたら、どうしよう…。しかし、絡まれなかった。彼はニヤニヤ笑いながら、こう言ったのだ。

「力強い足だねえ。カラテやってるんでしょ?」

「はあ?」と言いそうになったが、こらえて答えた。

「そうよ、すっごい強いんだから」

ついでにキックと空手チョップの真似もして差し上げた。空手なんて知らないけど、なぜか自分でもサマになってるのがわかる。「うひょー」と言ってのけぞる酔っ払いのオヤジ。そのとき、本物の格闘家のように、わたしは周囲の注目を一身に浴びたのでした。こんなところに来てまで、体力系から抜け出せないなんて、ちょっと複雑な気持ち…。「キレイな足だね」とは、確かに言わなかった。

やっと集金が終わり、バス停に向かいながら、同伴者のジャネットが言った。

「彼らは悪い人たちじゃないのよ。ただお酒が好きで、ずーっと飲んでいたいだけ」

彼女はわたしをバス停まで案内してくれた。あるお金持ちのコロンビア人は、「他人を信じるな」って言ったっけ。でも、会った人たちをみーんな疑って旅行するのは、つまんない。路線バスは会社帰りの人々で、どんどん混んでくる。座っている人は、みんな立ってる人の荷物を持ってあげてたの、自然にね。

(ただし! バランキージャの下町は、あんまり治安よくない。治安に関しては、男子禁制女性的旅ROOM4号室 中南米治安スペシャルも見てね!)

バランキージャ(BARRANQUILLA)
コロンビアのカリブ海沿岸最大の都市で、コロンビアでも4番目に大きい。人口約103万人。観光的な見どころはあんまりないけど、この地域で一番重要な港を持ち、商業と工業の中心地。有名な観光地カルタヘナまでバスで約2時間。湿気が多く、年間平均気温は28C。



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