ホーム2001年ラテンな旅インデックス ガイアナ

10/08/2001


ガイアナでございます
その5 秘境・・・カイエチュールの滝


ガイアナの玄関口は、首都ジョージタウン近郊(クルマで約1時間)にあるTimehri(ティメリ)国際空港。でも国内線はOgle(オーグル)という、市街に近い空港から出発するんだそうだ。着いてみたら、ヘリポートみたいにこじんまりしてた。短い滑走路が1本ある。滑走路わきには、夏草が茂ってる感じね。こういう空港、好きなんだわ。

雑然とした、バスターミナルみたいな待合室で待った。しばらくするとお呼びがかかり、VIPルームに案内してくれた。そう、わたしたちはVIPなの! だって1日ツアーで、なんと!210 USドル(30ドルディスカウント済み)なんだから。これってガイアナじゃ、大金。今日は、Trance Guyana Airwaysという、エアクラフトを大小取り揃えている国内線の航空会社の飛行機に乗る。ドキドキ・・・。

歩くとミシミシと音がするような木造の建物。木の手すりがついた回廊を歩いて、VIPルームに行った。昔の会社の社長室のイメージね。大統領や、ダイヤモンドで財を成したという経営者ご夫妻の写真が飾られてて、ソファには白いカバーが掛かってる。質素だけど、気持ちよく片付けられてて、お手洗いも超清潔。

待つのに飽きると、外に出て、回廊でしばらくぼーっとしてた。ガイアナに来てから、いつも懐かしいような気持ちがするのは、たぶん木の感触のせい。廊下の木の手すりに手をつくと、妙に落ち着く。木造校舎や、古い小津安二郎の映画を思い出しちゃう。日本がもっと木製だったころ。

「あとひとり来ることになっている」と言われて1時間くらい待ったけど、結局、誰も来ないまま、出発した。アイランダーという、セスナをちょいと大きくしたような、10人乗りの飛行機。

飛行機の写真を見る

ひとり参加のわたしは、他のツアー客の羨望の眼差しを一身に集め、副パイロット席に座らせていただいた。つぶらな瞳を持つインド系パイロット君をお隣りにして、すっかりパイロット・フェチ。彼の真っ白なシャツがまぶし〜い! フロントは全開だし、これはすごい体験になりそう。ブルブルと機体を振るわせながら、アイランダーは宙に浮かんだ。上昇しながら、雲に向かって突っ込んでいく瞬間は、昔の映画スターになった気分。この飛行機、相当古いの。操縦パネルも超アネログ。

低空飛行なので、果てしなく続くジャングル、うねうね流れる茶色い川が眼下すぐのところに拡がる。大スペクタクル。山々は稜線をくっきりと浮かび上がらせ、超然と立つ。ガイアナはまだ未開発の国だから、ジャングルには卒倒しそうにたくさんの天然資源が眠っているという。エキセボ川に行ったときも思ったけど、ジャングルの厚みと神秘性って、何も寄せつけない圧倒的な自然のちからがある。

そんな自然に呑まれたのか、しばらく飛んでるうちに、ものすごくこわくなってきた。アイランダーは、もう50歳位いってそうで、息切れしながら飛んでるような気がしないでもない。気流の変化でドーンと機体が落ちるときなんて、飛行機が小さいだけに、スリル満点。万が一墜落して、天然資源のど真ん中に突っ込んだら、いくら何でもサバイバルはむずかしい。なんて考え始めたら、どんどんこわくなり、そして、急激な眠気に襲われ、寝た。理解してもらえにくいんだけど、極限になると、眠くなる。リラックスしてると思われるけど、違うの。

副パイロット席で寝るって、クルマの助手席で寝るみたいなもんで、失礼。なるべく気づかれないように、ひっそりと寝たつもりだったけど、バッチリ見られてた。食事のとき、イギリス人女性観光客に話しかけられた。「あなたったら、あんなに一番いい席に座って、素晴らしい眺めが次々と現れてくるのに、寝てるんだもの。本当に信じられないことだわ。あんないい席で寝るなんて・・・。あなたはここまで来て、たくさんの素晴らしい景色を見る機会を失ったのよ」。

アイランダーは1時間ほど無事に飛び、カイエチュール空港に着いた。短い滑走路があるだけの、ただの空き地みたいな空港。藁葺き屋根のオープン小屋が立ってるのみ。ついに!ジャングル・ウォーク+滝見学ツアーが始まった。

鮮やかな色の植物や、5mmくらいの小さなカエル(ゴールデン・フロッグ)、cock of the rockという鮮烈なオレンジ色の鳥・・・。ジャングルを歩きながら、何度か展望台に出て、さまざまなビューポイントからカイエチュールの滝を見る。最初は遠くから、そして、だんだん近づいていく。静かな威厳をたたえて落ちる滝は、拒まないし、受け入れもしない。ただそこにあって、水を落とし続ける。

ガイド君によると、この滝、シングル・ドロップとしては、世界で一番の高さがあるという。Kaieteurとは、先住民の言葉で、Oldman's Fallの意味で、イギリス人の冒険家が1870年に発見したんだそうだ。それまで、この滝の存在を知っていたのは、先住民たちだけだったとか。これと同じ話、どっかで聞いたの、覚えてる? さて、どこでしょう??? それにしても、前人未到のジャングルに入っていく冒険家の気持ちって・・・。

展望台には手すりがない。つまり、ただの崖の頂上ね。「8フィートより崖の淵に近づかないこと」とか、「自分のリスクで行動しましょう」とか、看板に書いてあった。崖下を覗いてみたら、引き込まれそうで足がすくんだ。

滝見学を終えて、カナイマ空港に戻って、ランチ。こぶしが握れないほどお腹が空いてたから、100年分のチキン、サラダ、ポテト、豆、そしてコーラをいただいた。その後、さらに飛行機でブラジルとの国境方面に向かい、30分ほどして到着したのがOrinduikの滝。ここはスパ系で、水着に着替え、水遊びタイムとなる。滝は段々になっていて、底にはコケが生えててすべりやすかったけど、シャワー状になった天然ジャグジーで、オタマジャクシと一緒にリフレッシュした。オタマジャクシって、久しぶりに見た。そういえば、ツアーに参加してた女性は4人、水着になったのは、わたしだけでした。

初めて見た偉大な滝イグアス、神様がいたエンジェル・フォール、この秘境の滝カイエチュール、比較するのは失礼だけど、カイエチュールがすごかったのは、冒険感。未知の国に来て、セスナみたいな飛行機に乗って、副パイロット席に座って、ジャングルの上を飛んで、神秘の滝にたどりつく。こんなにアドベンチャー・チックな旅は、今までなかったかもしれない。知らない世界に入って行くと、言葉なんてどうでもよくなるような、ものすごいものがあって、どんどん魅せられていく、旅アディクト。ま、いつまでもこんなことしていられるかどうかは、ともかく。

帰りの飛行機では、絶対に寝ないようにするつもりだった。でも、眠気には勝てずに、ちょっとだけ寝た。だってずーっと起きてたけど、下はずっとジャングルで、そんなに景色に変化なかったし。いや、実は案外、すっごいもの見逃してたりして・・・。

関連リンク 
カイエチュールの滝の写真(飛行機など)
カイエチュールの滝の写真(滝本体)

エキセボ川 大河クルーズ
神様がいる〜ギアナ高地(エンジェル・フォール)




cock of the rock日本では、ルピコラと呼ばれる「南米産のとさかのオレンジ色の鳥」、と辞書に書いてあった。

 


Copy Right (C) Emico Meguro All Rights Reserved.