ホーム音楽・映画系 ラテンもの インデックス ビバ!アルモドバルオール・アバウト・マイ・マザー
5/15/2000
オール・アバウト・マイ・マザー
1999年 スペイン映画(原題 TODO SOBRE MI MADRE)

アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞など、世界の映画賞全21部門を総ナメ! スペインの異才、アルモドバル監督の新作は、ぜったいお薦めのスペイン映画。あの「おすぎ」に、「淀川さんに見せてあげたかった。この映画を薦めるために映画評論家になった」とまで言わせた絶品の快作。

PHOTOS http://www.gaga.ne.jp/

<物語の始まり>
臓器コーディネータのマヌエラは38歳、高校生の息子エステバンとは大の仲良しで、いっしょに古い映画のビデオを見たり、親子というより恋人同士のよう。エステバンは聡明な男のコ、日々の出来事をせっせと書きとめ、将来は作家をめざしている。でもふたりの間には、ヒミツがあった。マヌエラは、彼の父について、何も教えていなかったのだ。
そのヒミツを打ち明けようとしていた矢先の、ある雨の夜。お芝居を見に行った帰り、エステバンはサインをもらおうと女優を追いかけ、車に轢かれてあっけなく死んでしまう。絶望的な状況のなか、彼女はある決心をする。封印された過去、エステバンの父親を探しだし、息子の死を伝えること。夜行列車でバルセロナに向かう旅は、彼女自身を再生する旅でもあった・・・。


<ここからが本番>
「これじゃ、ただのヒューマン・ドラマじゃん」と思ったら、大きな間違い。アルモドバル節が全開するのは、バルセロナ到着後です。手術に手術を重ねて生きる、フェラチオの女王・オカマの「アグラード」、ゲイたちを更正するためにアングラな世界に踏み込んだはいいが、両性具有なバイ「ロラ」の子供を身ごもったうえに、HIVウィルスに感染してしまう修道女、彼女の母の贋作作家、女しか愛せない大女優、大女優の恋人でヤク中の女優・・・。突拍子もないキャラクターが続々と登場、物語は全力疾走で駆け抜けていく。そして明かされる母マヌエラの過去、死んだ息子の父親とは・・・。

<人間讃歌>
「この作品をすべての母親、母親になりたいと思う人々、女になりたいすべての男性に捧げたい」。アルモドバルはそう言った。にっちもさっちもいかない、逆境のラザニアみたいな状態で、主人公の女たちは、強く、したたかに生きていく。そんな彼女たちを見ていれば、「女になりたいと思わない男性」だって、きっと心を打たれるはず。母性を信じているのなら・・・。特にオカマの「アグラード」役 アントニア・サン・フアンの演技?!はサイコー!抱腹絶倒なだけじゃなく、強がりがかわいくもあり、哀しくもあり・・・。

<つぶやき〜ものすごい期待の先にあったもの>
『ハイヒール』(1991)で頂点に達したアルモドバルは、それ以降、ぱっとしなかった。なのに新作は、各国で絶賛の嵐!期待はグングン高まり、見に行くころには、沸点に達してた。次に来たのは、アルモドバルが「巨匠」になってたらどうしようって不安。彼はフツーになっちゃって、だから「みんな」が絶賛してるんじゃないかって・・・。
でもそんな期待も不安も跳ね飛ばし、カッカッカッと笑い飛ばすような「快!」な逸品を彼はつくった。これだけ期待して見に行って、こんなに満足させてもらった映画は、そんなにない。
売れ線を狙うこともなく、ハリウッドに媚びることもなく、個性を完璧に保ったまま、こんな感動的な映画を作っちゃうなんて、やっぱ彼って天才・・・。最近、彼を「巨匠」って呼ぶ記事をよく目にする。でもわたしにとって彼は、どんなに高名な監督になっても、アングラな異才なの。
プロットの緻密さ、彼の実母の死とこの作品の関連性、ゲイたちを自然に描く視点、受け継がれる「エステバン」という名前、生命力の源、おすぎをあそこまで感動させたのはなぜ?・・・。書きたいこと、もっと知りたいことはいろいろあるけど、あんまり分析しちゃうのもつまらない。予備知識を持たないで、まずは!見に行きましょ。

<出演者たち>
主人公マヌエラ役 セシリア・ロス
母国が軍政下にあった70〜80年代には、スペインに亡命していたアルゼンチン人。アルモドバル監督の初期の作品に何本か出演しているが、現在はアルゼンチンで女優として大活躍中!ひさしぶりにアルモドバル作品に出演した。意志きっぱり系、すべてが引き締まってる。

修道女シスター・ロサ役 ペネロペ・クルス
1974年、マドリード生まれ。国際的に活躍するスペイン期待の若手女優です。映画デビュー作は、日本でもちょっと話題になった『ハモン・ハモン』(1992)。現在はハリウッドにも活動の場を広げ、『ハイロー・カントリー』(1998)などに出演。主な作品は、『ベル・エポック』(1992)、『イフ・オンリー』(1998)、『ライブ・フレッシュ』(1997)など。出演作多数で、日本未公開作品も多い。最新作は、ゴヤの「裸のマハ」をめぐるモデル毒殺事件を題材にした『Volaberunt』(99年)。 う〜ん、見たい!

レズビアンな大女優ウマ役 マリサ・パレデス
「アルモドバル作品ご常連女優」のひとり。印象的だったのは、なんてったって『ハイヒール』(1991)の母親役。『パリ空港の人々』(1993)、『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)にも出演している。最新作は、ガルシア=マルケス原作の『大佐に手紙は届かない』なんだって! これは、ぜったい見たい!!!

フェラチオの女王・オカマのアグラード役 アントニア・サン・フアン
大女優たちを差し置いて、いちばん輝いていたのが、もしかして彼女? 万国共通なお姉言葉で、世間をメッタ斬り、エネルギー全開! 長いこと、マドリードのキャバレーで、ショーをやってたんだってね。映画出演も何本かあるっていうけど、ここまで注目されたのは、これが初めて? どう見てもオカマだけど、ホントに「女性」らしい。




主演のセシリア・ロス


左 セシリア・ロス 右 エステバン役 ??? 彼ってカッコいい。何者???


レズビアンな大女優役 マリサ・パレデス


左から オカマのアグラード役 アントニア・サン・フアン、セシリア・ロス、ペネロペちゃん


ゴールデングローブ賞授賞式にて ペネロペ・クルス


アルモドバル監督とペネロペ


ペネロペのラテンなくちびる


アルモドバルの豪快な?!笑顔

関連リンク ハイヒール


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