ホーム> 60日間のラテンな旅行体験記
インデックス>ヨーロッパ/アメリカ |
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久しぶりだね、リサ! |
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ささやかな32ペンス、大きな喜びを胸に抱きながら、ロンドンのヒースロー空港からさまざまな公共交通機関を駆使して、友人のリサが住むシュルーズベリー(SHREWSBURY)の駅にたどり着いたのは夕方だった。シュルーズベリーはロンドンのユーストン駅から列車に乗って(バーミンガム経由)およそ3時間半、「ミッドランド」と呼ばれるイギリス中央部に位置する人口7万人ほどの小さな町だ。 以前、わたしが外国人モデルのマネージャーをしていたとき、事務所に所属していたモデルが友人のリサである。初めていっしょに仕事をしてから10年の年月が流れたが、わたしたちは地道に文通しながらリレーションを保っている。「10年も文通しているモデルとマネージャー」なんて業界ではとっても珍しい関係だと思うけど。 リサはフランス製のクルマ「プジョー」に乗って、シュルーズベリー駅に迎えに来てくれた。HUG+KISSで感動の再会を果たしたあと、買い物があるというので、近所のスーパーに寄る。彼女といっしょに「チキン・コンソメ・スープの素」なんか探していると、なんか生活っぽくて、長いこと会っていなかったような気がしない。 リサの家に到着、手入れが行き届いた英国風カントリーハウスでお母様とご対面。キラキラ光る目が印象的な美しい婦人である。後でリサに聞いたら、お母様は元ダンサーで、むかし南アフリカでダンス学校を経営していたのだという。そういえば身のこなしが優雅だわ…。 夕食のお母様お手製の「カリフラワーのチーズ焼き」を食べながら、なぜかフランス談議となる。というよりは、わたしがフランスでのいくつかのエピソードをご披露したことから、この会話は始まった。ユーロトンネルが事故で不通になっていたのを知らずに、駅のインフォメーションで値段を聞いたら、不通になっていることはおくびにも出さず、ただ値段だけを答えた、とか…。 「フランス人は決して友好的ではない」 リサのお母様がノッてきた。一般的にフランスとイギリスはあまり仲がよくないと言われている。 「ユーロトンネルが貫通したとき、フランス人は『トンネルを通ってイギリスの貧しい食生活がやってくる』なんて言ってたわよね」 とわたしが火に油を注いでみると、お母様は悲しそうな顔をした。が、すぐに立ち直って尋ねた。 「どう、このカリフラワーはおいしいでしょ」 「もちろんよ」 初対面とは思えないほど、お母様とわたしは意気投合。それからもあーだこーだとフランス話は続いたが、絶頂に達したところでリサがボソっと言った。 「でもシトロエン(フランスの自動車会社)の仕事のほうが、ローバー(イギリスの自動車会社)の仕事よりもギャラがよかったわ。わたしのクルマもフランス製だし」 「そういえば、わたしの靴もフランス製だわ」 自分の足を見ながら、わたしは言った。パリで購入したクーカイの靴はとてもカッコいいうえに、履きやすい。 「そうね、そういえばウチのXXXも…」 お母様が続いた。なんだか話題が逸れたようなような気がしないでもないが、「紛争」の解決策は、こんなところにあるのかもしれないと思ったりした。リサはいい味を出している。 「いつもは母の部屋でいっしょに朝食をとるの。よかったらどう?」 リサが誘ってくれたので、お母様の部屋でテレビを見ながらの朝食となる。ワイドショーではダイアナ妃の近況でもやってるかと思ったら、ディベート番組(『朝まで生テレビ』のやや軽めな感じ)でビックリ。「朝まで…」じゃなくて、「朝から」ディベート番組なんて、お国柄なのかなあ…。 「ロンドンの待ち合わせはキャンセルしたから、今日はいっしょに観光しましょうね」とリサ。再び感激するの巻。 「そういえば、3年くらい前だったかな、エマニュエルと会ったのよ」 リサが口火を切った。エマニュエルとは同じ事務所にいたモデルの男のコだ。あら、懐かしい。 「偶然に?」 「ううん。雑誌を見てたら写真のクレジットに彼の名前があったのよ。名字も同じだったから、雑誌の編集部に電話して確認したのね。そしたらあのエマニュエルだってことがわかったの」 リサはマメで几帳面なモデルなのだ。 「それで?」 「まあ、ダメかなあとは思ったんだけど、念のためにわたしの電話番号を編集部に伝えて、彼に電話するようにってメッセージを残したら、彼から電話がかかってきたのよ」 「すごーい。で、会ったんだ」 「そうなのよ。彼はいま写真家兼演出家なのよ。超有名な写真家ともともだちなんだって! たまにモデルの仕事もしてるらしいけど、あの超有名なアイスクリームのポスターとか…」 すごいことになってきた。そうか、彼はそんなにグラマラスな人生を送っていたのか。学校のクラス会で、欠席したクラスメイトの近況をまた聞きしてるみたいな不思議な感じ。あのころ、オーディションをこなすためいっしょに東京を駆けまわったモデルたち、みんなどうしているんだろう。 「ミユキはニューヨークで大学に行ってるのよ。堅実でしょ? 人生いろいろだよね」 「ねえ、あともうひとり女のコのマネージャーがいたじゃない? エア・フランスのスチュワーデスになった…、誰だっけ?」 ああ、いたいた。でも名前は思い出せない。彼女が付き合っていたモデルの名前は思い出せるんだけど…。 「エア・フランスに乗ったら、彼女と会ったのよ」 ホント、人生いろいろだ。 でもリサとわたしはあんまり変わっていない。彼女はモデルを続けてるし、わたしもプラプラ旅行ばっかりしてる。でもそれだっていいんじゃない?
振り返ってみて「楽しかった。やるだけのことはやった」って思えればね。 ゲストブックには日本人の名前がたくさんあった。英国人は几帳面なので、ちゃんと集計してある。結果は…、1位アメリカ人(1万6000人)、2位イギリス人(1万4000人)、日本人は4400人だが、ここまでの距離を考えるとけっこう健闘していると思う。あれ、こんなことしか覚えてないのかしら…。 夕暮れのメインストリートはクリスマスのイルミネーションに彩られ、かなりいいムード。ヨーロッパでは11月の下旬くらいからクリスマスモードに突入するのだ。ヨーロッパのクリスマスの雰囲気が味わえてホントに幸せ。軽めのランチだったので、イルミネーションを見ながら「ティーサロン」でスコーンを食べることにする。 スコーンを縦に切ろうとしたら、リサが鼻で笑った。「スコーンは横(水平)に切るのよ」とリサ。バターを塗り、ジャムを塗らずにホイップクリームを塗ろうとしたら、またもヒンシュク。そう、スコーンを食べるときは、まずスコーンを横に割り、それからバター+ジャム+ホイップクリームの順に塗り重ねていくのである。その通りにしたらとってもおいしかったし、正統的な感じがする。だけど…、すっごいカロリーじゃない? 彼女の友人が住んでいるフラットに6人ほどが集まって、中華料理の夕べ。町の中心地の中華料理屋で、お持ち帰り用の料理を作っていただき持ち帰る(ケータリングね)。どこに行っても中華が食べれるのはうれしいし、どこに行っても何を食べてもおいしいのは幸せなことだが、最近ちょっとカラダが重いような気がする(これだけ食べれば当然か?)。旅行もあと1週間ほどでおしまい。東京に帰ったら有酸素運動に励んで、カラダを鍛え直さなきゃ…。 食事のあとはイギリスの代名詞「PUB」へ繰り出す。ワインをいただいたせいか、帰りのクルマのなかで猛烈な眠気に襲われた。気が付くとリサの家があるシュルーズベリーの町が近づいていた。寝ちゃってゴメンね、リサ。 関連リンク フランス人
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