ホーム 60日間のラテンな旅行体験記 インデックスペルー

文明に戻るの巻


ジャングルロッジとも今日でお別れだ。出発までハンモックに揺られたり、オウムなどの写真を撮ってのんびり過ごす。

小舟は朝8時半に出発。ガイドのアントニオ、初めて会うカナダ人の女のコ3人組のグループ、そして昨晩フォルクローレを演奏していた青年たちとともにイキトスへと向かった。

青年たちは舟のうえでも、フォルクローレを演奏してくれる。弦が1本切れているけれど、そんなことは気にもしないで、舟の大きなエンジン音にも負けずに、ガンガンと演奏を続ける。昨晩よりずっと気持ちよく聞こえたのは、オープンエアのせいか、蚊がいないからか、それとももうすぐ都会に戻れるからか?

イキトスに到着し、アントニオとはここでお別れ。4時間ほどフリータイムがあるというので、カナダ人の女のコ3人組と市内観光に出かけることにした。MOTOKAR(バイクタクシー。客車をバイクで引っ張って走り、乗客定員は2名)に分乗し、庶民の町ベレンへ。

バイクタクシーがベレンの船着き場に着くと、小舟に乗った船頭さんたちが手ぐすね引いて待っていた。ふたり乗ったら沈むんじゃないかと思うほど小さいプリミティブな小舟が、15艘くらい浮んでいる。もちろん救命道具なんかあるわけないし、もし万が一ひっくり返ったら汚水とゴミまみれになるので、遠慮させていただく。

「どこから見ても観光客」のわたしたちは、写真なんか撮りながら、マーケットが立ち並ぶ通りをお気楽に歩いていった。

かつて人間はこういう生活をしていたのだろう。釣ったサカナを売り、売ったお金で野菜を買う。「お金」という概念がなかったころには、物々交換していた。しかしある地域で文明が進み、こんな埃まみれの市場や木造の高床式住宅が立ち並ぶ地域は「貧困地帯」と呼ばれるようになった。

澱んだ川、住宅の裏手に積み上げられたゴミの山、並べられた食べ物にたかるハエ…、そんな通りを歩くわたしたちに好奇と非難めいた視線が集中する。ピーナッツのカラも飛んで来た。引き際だ。

バイクタクシーに乗って中央広場まで戻り、カフェで飲むコカコーラはとてもおいしい。一気に飲む、飲みおわった途端、反射的にため息が出た。

「ああ、コカコーラよりすばらしいものは他にない!」

カナダ人トリオのひとりが言う。わたしたちは4人はまるで実証広告のキャラクターのように、喉を鳴らしながらコーラを飲んだ。

カナダ人トリオのひとり、ジャネットはリマで教育関係の仕事をしているそうだ。2年契約で派遣され、すでに7か月ほどこの国で暮らしている。あとのふたりはジャネットの妹とともだちだ。

「ピンクのイルカを見た」と彼女たちに言うと、すごい反応があった。彼女たちは3回もアマゾン川を航海(?)したのに、1回もイルカを見れなかったという。わたしたちのグループは、本当にラッキーだったのだろう。

時間があったので、「メルカード・デ・アルテサニア」というみやげ物屋が集まる地域に行き、しばしショッピング。「さあ、買いなさい!」とばかりに営業されるかと思ったが、そうでもないし(その代わりあまり値引きもしないが)、一帯は緑が多く、歩いているのは観光客ばかり。のんびりとしたこんな風景のすぐ近くには、さっき訪れた「貧困地帯」がある。

カナダ人トリオは途中の寄航地トルヒージョで降り、「いい旅を!」と言って別れた。わたしはいったんリマに戻った。リマに1泊し、明日はカハマルカという町へ行く。

空港からリマのホテルに向かうタクシーのドライバーは、お喋り好きだった。

「ほら、あそこにレストランが見えるだろう? とっても値段が高いんで有名なんだ」

海に突き出したピアに建つレストランを指差し、彼は言う。

「このあたりにカジノ+ホテルなどの施設をつくる計画があるんだ。もちろん外国人観光客がターゲット、外貨が必要なんだ」

「ペルーの国営企業は合理化のために次々と民営化されている。ペルーの企業は民営化する力がないから、ほとんどは外資に買い取られてしまうんだ。電電公社はスペインに、航空会社のアエロペルーはメキシコに、石油会社だって…」

「フジモリはとてもよくやっているよ。この6年間でテロもほとんどなくなり、ずいぶん平和になった。だからボクたちは国がよくなるために税金や物価が上がっても、我慢してきたんだ。国は豊かになったっていうけれど、それは一部分の人々だけ。庶民の生活は苦しいままだから、そろそろ我慢も限界だよ」

イキトスの埃っぽい市場が蘇る。ほんの数時間まえに訪れたその場所は、大都会リマで空調の効いたタクシーに乗っていると、もう昔のことのように遠くに行ってしまったみたいだ。こんな温度差は観光客のわたしだけが感じているのではないのかもしれない。

「明日はリマの観光かい?」

ひとしきり話すと、彼は話題を変えた。

「カハマルカに行くの」

「それなら空港までタクシーが必要だ。何時の便だい? 送ってくよ」

このパワーがあればこそ、ペルーは不滅…。だといいんだけど。

ホテルに到着すると疲労と空腹が襲ってきた。外で食事をするのは面倒臭いし、楽しみにしているテレノベラがもうすぐ始まってしまう。ジャングルロッジには電気がなかったので、テレビは見れなかったのだ(たった2泊だったけど)。フロントに尋ねてみたら、サンドイッチならルームサービスしてくれるというので、喜んでいただくことにした。

テレノベラを見ながらサンドイッチを食べ、インカコーラ(ペルーの国民的飲料)を飲む。それだけのことなのに、顔が自然とニヤけてしまうほどウレシイ。やっぱりわたしはアマゾンには住めないだろう。滞在中はその気になっていたんだけどなあ…。ガイドのアントニオもジャングルでは「アマゾンを知り尽くしたオトコ」って感じで、すごく頼り甲斐があるように見えたし、実際、とても頼りになったのに、移ろい易きはこころなり…。

次は、ペルー人モデルたちとランチする

関連リンク テレノベラ

ペルーの写真

旅行した時期は1996年10月〜11月です。



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