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ラテン・ダイアリー 2006


2006年7月23日(日)美しい人

原題は"NINE LIVES"、9人の女性が主人公になり、ショート・ストーリーが積み重なる。

模範囚をめざし、一日も早く出所して娘と暮らすことを願うが、ほんの小さなトラブルからすべてが水の泡になってしまう。スーパーで昔の恋人と再会する。父親への愛憎に悩み、傷つき、銃口を口にくわえる。高級マンションを購入した友人夫妻を訪れる夫婦の隠された秘密。疲弊した夫婦生活を救う「天使」。別れた夫の現在の妻が自殺、お葬式に行った元妻を待ち受けていた出来事とは・・・。娘の担任と不倫する母。乳ガンに冒された手術直前の妻と夫の会話。そして、幻想と現実が交錯するお墓参りのエピソード・・・。

監督はロドリゴ・ガルシア。日本では2001年に『彼女を見ればわかること』が公開されました。ショート・ストーリーを積み重ねていくスタイルは変わらないけど、いっそう深みが増しているように感じた。本当に、本当に深い。見終わってから、パンフレットを読んでいて、「あらら、わかってなかった」と気づいたことも、たくさん。DVDが発売になったら買って、寝る前に、何度も何度も見ながら寝たい。見る度に、いつでも発見があって、寝ながら熟成していきそう。

「人生の中で感情が高ぶる一瞬を、できるだけ平凡な情景の中で描きたかった」。

「最も気を遣っているのは全体の流れやリズム。特にセリフは内容は日常的でも詩や歌から引いたように感じられるものが好み」。
(日本経済新聞の『美しい人』紹介記事、ロドリゴ・ガルシアのインタビューより)

お父さんは、ガルシア=マルケス。人間に対するとどまるところを知らない興味と好奇心、そして「言葉」へのこだわりは、父親ゆずり???

あとから、あとから、シーンを思い出しながら、しみてくる映画は、いいな。

関連リンク ガルシア=マルケス

2006年5月21日(日)
ダック・シーズン』、そしてNatalia Y Laforquetina

ゆっくりと、じんわりとこころにしみてくる。郊外の団地。両親が離婚寸前でイライラと虚無感に揺れる14歳の少年フラマが住む部屋で物語は進む。フラマの親友モコ、お隣に住むリタ、そして「こんなはずじゃなかった」人生を送るピザの配達人ウリセス。ひょんなことからこの4人が、ある日曜日、停電の午後の数時間を過ごし、またそれぞれの生活へ戻っていく。でも、数時間をいっしょに過ごしたことで、戻る先には、ほんのちょっと、前とは違うスパイスがふりかけられているかもしれない。

舞台となるのは団地の部屋、登場人物はほとんど4人だけ。モノクロ。派手なカメラワークはなく、ほとんど定点、小津安二郎みたいに。前半はちょっと退屈。でも、ウリセスのあるセリフがきっかけで、なぜこの映画のタイトルが『ダック・シーズン』なのか、退屈だった前半がなぜ存在したのか、だんだん掴めてくる。そして、どんどんせつなくなる。

「良いこともだけど、悪いことも長くは続かない。それが無常」。瀬戸内寂聴さんがそう言っていた。この映画は無常のメキシコ版? アヒルはいつか飛べると信じさせてくれるから。

いいときもあるし、うまくいかないときもある。いいときはお調子に乗ってるようにみえることもあるだろうし、実際に調子に乗り過ぎることもある。でも、いいことがあったあとには、うまくいかなくなる。でも、うまくいかなくなったあとには、いいことがある。そして、こんな映画を見て、ひっそりじんわりする。

見終わって、オープニングで流れたNatalia Y La Forquetinaが歌う "Un Pato"の歌詞の意味が効いてくる。とっても地味だけど、後からしみてくる。『ダック・シーズン』はそんな映画。こんなにステキな映画が東京に居ながらにして見られることに
、感謝!です。

Natalia Y La Forquetinaは、2002年に衝撃的なアルバム『メキシコからこにゃにゃちは!』でデビューしたナタリア・ラフォルカデのバンド。椎名林檎路線で?バンドを組みました。"Un Pato"は、2005年に発表されたNatalia Y La Forquetinaの"Casa"というアルバムにボーナス・トラックとして収録されています。このアルバムも、そんなに派手さがあるわけじゃないけど、秀逸です。さらっと聴くと、かわいくてフォーキッシュ。でも、骨太。ちょっと『ダック・シーズン』と似てるかもね。「次はどうなるんだろう?」って、期待させてくれる。

巷は超話題作でもちきり。それはそれとして、こういう映画にもたくさんのひとが見に行って、また新しい「こういう映画」もたくさん公開されていくといいな。

関連リンク
『ダック・シーズン』オフィシャル・サイト
ナタリア・ラフォルカデ 『メキシコからこにゃにゃちわ!』

2006年5月2日(火)情熱の貴公子 フアネス〜ショーケース・ライブ!
ある日、eplusから「ショーケースご招待」のメールが来た。ビール飲みながらネットで応募して、それっきり忘れてたら、あっさり当った。期待しないほうが、いいコトってあるもんなんだわ。


品川プリンスの「ステラボール」は、東京中の、いや日本中のコロンビア人が集まっているのではないか!?と思うくらい。開演前から熱気に満ちていました。

向こうじゃスタジアムや大会場でライブをするシンガーだから、こんな至近距離で見られるなんて、本当に貴重なこと。しかも、日本で。今まで見たショーケースは、ほんの4〜5曲程度だったり、とっても開演時間が遅れたりしたけど、彼は違った。主賓であるメディア関係者へ向けたプロモーションビデオが終わると、ほどなく本人登場。アンコールに次ぐアンコールで、いっぱい歌ってくれた。計10曲。

喋るときも、歌うときも、とにかく「こころ」がこもっていて、丁寧。ものすごーく好印象を持ちました。「なぜ、英語で歌わないの?」という質問に、「自分の言葉であるスペイン語で歌うことが一番自然なんだ」と答えた彼にも。「スーパースターにしては、腰が低い」とは、いっしょに行ったともだちの弁。

フアネスは2001年にラテンアメリカに行ったとき、ベネズエラのお友達宅で録画させてもらったMTV LATINO で初めて知った。その後も、コロンビアのストリーミング・ラジオや、YAHOO MUSICA EN ESPANOL などで、よく耳にしてた。

それにしても、いま、なぜ日本でフアネス? ひとつはもうすぐワールドカップだから。サッカー=ラテンってイメージは根強いし、いいタイミング! 

そしてもうひとつの理由は、裏話系+推測。

コロンビアが誇る国民的テレノベラ『YO SO BETTY LA FEA〜わたしはベティ〜醜い女』がスカパーで放映されたのは、コロンビア大使館の売り込みがあったから・・・という話を聞いたことがある。「世界100ケ国以上で放映されているのに、なぜ日本では・・・」と言ったかどうかはわからないけどね。

今回のフアネスのショーケースにもコロンビア大使館の方々がいらしていて、フアネスは、大使館員の名前を複数挙げて、「本当にありがとう!!!」と言ってたので、もしかして、いや、やっぱり・・・と思ったりしました。ホント、あくまで推測です。

朝のTV番組「めざまし」でもフィーチャーされ、こないだティップネスに行ったらジムエリアでかかってるし、日本でもヒットして、たくさんの人が彼の魅力や、ラテン音楽の魅力を知ってくれたらいいな!!!って、本当にそう思います。

彼も言っていたけど、残念ながらコロンビアという国に、いいイメージを持っている人は少ない。いろいろあるけど、こんなにステキな音楽があって、ステキなシンガーがいる。わたしにとってもコロンビアは本当に魅力的な国でした。

そうそう、6月7日に発売になるフアネスの日本でのデビューアルバムのリードトラックは、"LA CAMISA NEGRA"(黒いシャツ)。日本語タイトルは、「追憶の黒いシャツ」です!!! 昭和の香りがするよね。このタイトルを聞いて水原弘を連想する人!にも、そうでない人にも、幅広い年齢層に受け入れられるクラシックなラテン・ナンバーだと思います。

最後になるけど、今回のショーケースのMCはキャロル久末さんでした。J-WAVE開局以来のキャロルさんファンのわたしとしては、感動もよろこびも二倍!!!

関連リンク 
フアネス〜日本のオフィシャルサイト 
私はベティ〜醜い女 
コロンビアの旅行記 

2006年3月26日(日)『愛より強い旅』
主人公のカップルが、パリ、スペイン、モロッコ、アルジェリアを旅するロードムービー。この映画を見たのは、ヨーロッパに行きたい!という思いがふつふつしてたときだったせいか、映画を見ながら旅行してる気分になった。

カップルはふたりともパリに住むアラブ系。未知の故郷をめざす彼らは、お互いを求めあうときは熱くなるけれど、比較的淡々と旅を続ける。「ルーツを探して」とか、「自分探し」とか、そういう言葉の響きは、ちょっと違うような気がする。もっと衝動的、それでいて必然がある。

この映画がすごいのは、いかにも映画の撮影的な旅じゃなくて、リアリティに満ちていること。だから自分が旅をしていたときのことを思い出したり、もし、また旅に出るなら、こんな旅になるかもしれないって、重ね合わせたり、想像したりしながら、主人公たちといっしょにアルジェリアに向かう。

さりげないところでは、スペインの水飲み場のシーンはよかったな。スペインの小さな町や村には必ず!って言っていいほど噴水や水飲み場はあるけど、でも、スペインに行かないと「ない」からね。水しぶきが飛んできそうな臨場感もあってね。

そして、クライマックス、トランス状態に入るシーン。震動が伝わってくる。

主演のロマン・デュリスは、ブレーク必至!と叫ばれて?!早10年以上・・・。1994年の『青春シンドローム』に始まって、『猫が行方不明』(1996年)、『パリの確率』(1999年)、そして『スパニッシュ・アパートメント』(2002年)などなど、ステキな映画にたくさん主演してるうえに、この上なくいいオトコ。が、派手めじゃない映画が多いせいか、いまひとつ注目されてない気がする。そこがまたいいんだけど。もうすぐ、『スパニッシュ・アパートメント』の続編、『ロシアン・ドールズ』の日本公開も迫っていることだし、ホンキでチェックしておきましょう。

そして、ロマン・デュリスの彼女役はルブナ・アザバル。これが初めての日本公開作品だそうなんだけど、自然な野性味と奔放さがキョーレツで、ものすごく魅力的。彼女も要チェック!

この映画、東京でのロードショー上映は終了しましたが、来月(4月)には、下高井戸シネマ、飯田橋ギンレイホールでの上映が決まっています。全国順次公開中!!! 詳しくは、オフィシャルサイトでチェック!してね。

オフィシャルサイトへのリンク

関連リンク 
ニコラス・ロペスの『落第』


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