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04/21/2003


水都〜周荘


−5日め−
今日は大晦日(2002年)。でも旅行している限り、「師走」の慌しい雰囲気は感じられない。今日は静かな水の都として、最近、人気急上昇中だという「周荘」へツアーで行くんだけど、大晦日でもツアーはフツーに出発した。やっぱり、旧正月の国だわ。集合は、「上海八万人体育館」。さっすが、中国!って感じのネーミングね。そんな大きな体育館なんて、迷ったりしないかしら・・・と思ったけど、バス・ターミナルも大きくて、すぐわかりました。

このツアー、一昨日、虹口に行ったとき、通りがかった旅行代理店で予約したんだけど、乗客は見事にすべて中国人。が、バスに乗り込んでしばらくすると、ラジオから日本語が聞こえてきた。聴き覚えがある声だと思ったら、TOKIOの松岡くんと長瀬くん。「トキオ・スタジオ」って番組らしい。超日本語アクセントの「トキオ・スタジオ」ってジングルが、その場の雰囲気にミョーにそぐわないような、「融合するアジア」っていうか・・・。ガイドの男のコは、日本のビジュアル系っぽい雰囲気が気持ちあったし、日本語も少しできたから、日本好きなのかも。

関連リンク 虹口〜旧日本人居住区

周荘は、上海から70kmほど離れたところにある水郷の村。上海から個人で行こうとすると、3路線のバスとミニバスに乗り継がなければ辿りつけないらしい。そんなことしてたら、夕方になりそうなので、ツアーで行くことにしたのね。観光バスは、整備された高速道路をびゅんびゅん飛ばし、1時間半くらいだったかな、ほどなく周荘に到着。

バスの中、ガイドくんの説明は延々と中国語で続いた。集合の時間がわからなかったので日本語で尋ねると、「東庄P 4:20 集まる」と書いてくれた。「東」っていう字は、中国の簡易体ね。「奈」みたいな字。

わたしが長いこと憧れつづけていた、水の都、蘇州のイメージが、そこにあった。観光客向けの入口を通って、村の中に入ると、水路が交差している。あちこちにある太鼓橋。クルマも自転車も通っていなくて、船頭さんが歌いながら舟を漕ぐ。テーマパークのような人工的な押しつけがましさはなくて、普通に人々が住んでいるので、自然な生活感がある。路地に並ぶたくさんの小さなお店。舟が行き交い、水路の脇にしだれる柳が柔らかい風にそよぐ。ときどき、泣いているように少し震える。周荘博物館の2階のテラスがよかったな。木造のバルコニーから水路を見下ろすと、すっと風が吹き込む。

明や清の時代にタイムスリップしたような雰囲気で、いろーんな映画のロケが行われているっていうのも、納得。宮沢りえが三蔵法師役を演じた『西遊記』も、ここで撮影されたんだそう。

ツアーは基本的に自由行動中心で、集合時間まで、ゆったりと水郷の村を歩いた。わたしが求めていたものはあったけど、振り返ってみると、印象的な細かい出来事があんまり残っていないのは、やっぱりツアーだったからかな。自転車こぎながら、自分のイメージを、がむしゃらに探し続けた蘇州は、どこか魔術的な感覚で、強く残っているんだけど。

関連リンク 蘇州暮色

帰りのバスは渋滞した。なんかミョーに懐かしい曲がかかるんだよね。バーティ・ヒギンズの『カサブランカ』(郷ひろみが歌った『哀愁のカサブランカ』のモト歌)とか、スティービー・ワンダーとか。唐突に、アブリル・ラヴィーンもかかったりするのがおもしろいところなんだけど、そうこうしているうちに、すーっと深い眠りに落ちた、ふと、気がつくと、まさにバスは、上海八万人体育館を出発したところ。どうしよう、降ります!って、日本語で叫ぼうか・・・と思っているうちに、バスは体育館の敷地を出て、一般道を走り、高速に乗った。ま、いいか、夜の上海、高速のドライブも。

首都高みたいなイメージなのね。いつも地面と同じ高さで見ていた上海が、別の、ちょっとよそゆき顔を見せる。最初に泊まったYMCAのあたりも通った。向いの再開発地区は、摩天楼みたいなビルがそびえたつ。たった5日前のことなのに、もうずいぶん昔のことみたい、YMCAに泊まったのは。バスの終点、虹口に近づくと、めっきり光の量が減って、間近に香港みたいな(そんなに高級じゃなさそうな)細長い高層アパートもあった。

さすがにもう眠気は覚めてて、終点の虹口でしっかり下車し、タクシーをつかまえた。今晩は、黄浦江クルーズに行くつもりだったの。寝過ごして、ちょっと予定は狂ったけど、地図で見てみると、上海八万人体育館より、虹口のほうが、クルーズの出発点に近いみたい。

考えてみれば、上海でタクシーに乗るのは、これが初めて。なんとかのひとつ覚え状態、ずーっと歩きまわってたからね。バスを降りると、あんまり時間もなかったので、方向もわからないまま、走ってきたタクシーを勢いで捕まえた。地図と、漢字で行きたい場所を必死に説明した。言葉が通じないので、ホントにわかったのかちょっと不安だったので、何度も念を押す。ドライバーくんは、ため息をつきながら、タイヤ鳴らしながら、思いっきりUターンした。

一昨日、歩きまわった虹口近くのピザハットがある。夜の繁華街は、ヨーロッパみたいに、道の端から端にクリスマスのデコレーションが飾られて、光の洪水。ライトアップされていない、フツーのコロニアルな建物は、静かに佇む。タクシーはカッ飛ばす。夜の上海が、通り過ぎていく。

15分もすると、タクシーは無事目的地に到着。ドライバーくんは振り向き、快心の笑みを浮かべ、「ほーら、キミがめざしていたのは、ここだろう」と、顔全体で表現した。

夜の黄浦江遊覧船は乗ってみてよかった。視点も変わるしね。ずーっとデッキにいたかったけど、とにかくとっても寒くって、中と外を行ったり来たりしてた。印象に残るのは、浦東の近未来的風景じゃなくて、イルミネーションが減ってきたあたり、闇にぼわっと浮かぶ上海大廈・・・。

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上海も明日で終わり。クルーズが終わってからも、むさぼるように歩いた。そしたら、外灘のアールデコっぽいビルの入口に、小さな看板が出ているのを見つけた。「BONOMI CAFE、このビル2階」。上海浦東開発銀行ビルの226号室。セキュリティのおにいさんに、「カフェに行く」と告げ、クラシックなエレベータに乗って、2階へ。三越本店のエレベータの雰囲気ね。ここはオフィスビルで、いろーんな会社が入っているんだけど、そんじょそこらのオフィスビルと違うのは、卒倒しそうなほど、コロニアルなこと。階段の手すり、天井、壁から柱まで、もう見事なデコレーション。2階に着き、グルッと回廊をまわると、カフェがあった。パティオに面していて、ビルの中央部は、吹き抜けになっている。クラシックが流れ、内装は木が基調。ここで飲んだエスプレッソは、上海で一番おいしかった。

明日は別の地区に移動するので、南京東路を歩くのも、今宵限り。もう夜の10時だっていうのに、ホコテンは人、人、人。で、思い出した。今日は大晦日だったんだっけ。ホテルに戻って、シャワーを浴びている間に新年になった。

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