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テレノベラ・マニア

基礎知識 内容と傾向 長く続かせるためのワザ なぜ続く? テレビサ

長〜いテレノベラの1シーンの謎 ガルシア=マルケスとテレノベラとの関連性

基礎知識

テレノベラはスペイン語で「テレビ小説」の意味。主にラテンアメリカで制作される超連続メロドラマで、NHKの朝の連ドラ、日曜の夜の大河ドラマ、昼メロをぜーんぶ足したようなもの。

放映枠
1時間ものが多い。でも2話を組み合わせて1回2時間!放映しちゃうパターンもあるし、1話を2回に分けて放映することもある。30分ものも、たまにある。

放映日
月〜金。人気があるノベラは、土曜日に「今週のまとめ」をやったりする。ブラジルでは、月〜土が基本とか。

放映回数
1時間枠で120回くらいが基本で、100〜150回くらいの作品が多い。中には数百回、数年間続くものもある。不評だと打ち切られるのは、いずこも同じ。

主な生産国 
1位メキシコ、2位ベネズエラ・・・といったところか。最近はコロンビア、ブラジルの躍進がめざましい。

海外に輸出され、「テレノベラ」と化した日本のテレビドラマは何でしょう? それは「おしん」。ラテンアメリカ、アジア、アラブ圏などで放映され、大好評を博した。長年にわたり貧しさや向かい風に耐え、くじけずに立ち向かい、努力も重ね、愛と幸せをつかむ。これぞテレノベラのエッセンス! あと、三田佳子が主演していた「いのち」っていう古いドラマ、キューバで見たことがある。

テレノベラの内容と傾向 

「テレノベラはワンパターン」と言われ、確かにその通りなんだけど、それでもいくつかのパターンがある。主な傾向を挙げると・・・。

その1 テレノベラの基本がこれ! シンデレラ・ストーリー、棚からボタ餅系
貧しい女のコが超お金持ちと知り合い…、突然遺産が転がりこみ…、孤児だったんだけど実は大金持の娘だということが発覚し…などなど、古典的な人生急展開もの。そこにラブロマンスと骨肉の争いが絡んでくる。降って湧いちゃうシンデレラ・ストーリーは、メキシコのテレビサというテレビ局が得意としている。

その2 ひたすら骨肉の争いを繰り返す系
過去の憎しみが現在へと繋がり、親子二代、兄弟姉妹、親戚、友人…みんな巻き込んで愛と骨肉の争いを繰り広げる。これも古典的な手法で、ベネズエラ産のノベラはこの傾向が強い。 ベネズエラ人に言わせると、「ゴハンも食べず、シャワーも浴びず、ひたすらいつもケンカして憎しみあってるんだよね」。とにかくすごいエネルギー!!!

その3 幼なじみ 恋物語系
親が決めた許婚がいるにも拘わらず、禁断の恋に落ちちゃう少年と少女。成長した彼らは真実の愛を貫き通そうとするが、そうは問屋が卸さない…。このテのタイプとしては、境遇が違うふたりの少女の成長と愛と現実を描く…なんていうのもある。

その4 メロドラマ系
夫は浮気、子供は反抗期、そして昔の恋人が現われ、人生の転機が訪れちゃったりして…。

その5 トレンディドラマ系 
ギョーカイもの、音楽と若者を絡めたものなど。

その6 波乱に満ちた半生を描く系
主人公の女性の波乱万丈な人生の足跡を追っていくもの。『おしん』の世界ね。

その7 橋田壽賀子なホームドラマ系

その8 コメディ、あふれるユーモア系
最近のコロンビアものは、テレノベラの枠を飛び出して、笑えるものが続々…。

長く続かせるためのワザ
1時間もので120話続かせるためには、たくさんの登場人物とテクニックが必要。たとえば・・・。

A.「対比と組み合わせ」
貧乏人と超金持ちを対比して描くってのが基本パターン。貧乏だけど明るく生きる女のコとその家族、超お金持ちだけど心に虚しさを抱える男性と家族。彼らは最初は遠く離れているが、同時進行で描かれるうちに信じられない偶然が重なり、グングン近づいていく…。

このやり方でベースとなる家族の数を増やしていけば、どんどん登場人物の数は増えるし、登場人物の組み合わせバリエーションは豊富になるし、人間関係は複雑になるし、物語は長く、ながーく続きます。

B.「愛憎と骨肉の争い」
接近した男女は決してすぐには結ばれない。ふたりが愛を意識しはじめたころ、超お金持ちの男性の奥さんは交通事故で死んじゃったりするけど、まだまだ先は長い。とんでもない悪人が現れ、次から次へ、これでもか!と苦難が襲い、すれ違い、愛と憎しみが交錯し、骨肉の争いを繰り広げていったりする。

「愛憎と骨肉の争い」は、テレノベラのエッセンス! ホントにホントにすごーく濃いです。何週間にもわたって、ループ状態になりつつ、「三つ巴」どころじゃなくて、「百巴」状態でのたうちまわる。ストーカーが出現するのもよくあるパターン。

C.「家族の絆」
ラテンは家族の絆をとっても大切にするから、主人公たちの家族も、必ず!ストーリーに絡んできて、場合によっては核になったりする。娘のともだちの父親と恋に落ちる母とか、グループ交際している若者たちの親同士も三角関係になってしまったり…。こうして登場人物が増え、家族も絡めて人間関係が複雑になっていくんです。

テレノベラはなぜ続く?

似たりよったりなテレノベラが中南米で星の数ほど製作され、続くのはなぜ?

理由その1 シンデレラ・ストーリーへのあこがれ
貧しい少女がお金持ちの青年と出会い、貧しい少女に遺産が転がりこみ、貧しい少女が実は大金持の娘で、といった「シンデレラもの」はテレノベラの基本。最近はテレノベラのバリエーションも豊富になってきたけど、シンデレラ系の人気は根強い! これはテレノベラを見る庶民の現実が厳しいから、現実に夢や愛が欠けてるから、といわれている。

理由その2 現実にはあり得ない勧善懲悪
最後に愛と正義が勝つ! そんなスカッとした最終回は、そこにたどり着くまでの道のりが長かっただけに爽快! でも中南米の多くの国は構造的に「持つものと持たざるもの」の格差が大きくて、一生懸命働いても、庶民の生活は楽にならない。正義は勝たないし、悪いヤツはのさばるし、現実がなかなかうまくいかないから、テレノベラに引き込まれる、という説あり。

理由その3 人間は弱いけど、一生懸命生きれば報われる
テレノベラの登場人物は、いつも「わかっちゃいるけどやめられない」状態になる。何度も何度も同じ過ちを犯し、どんどん深みにはまり、地獄の苦しみを味わう。でも最終的には超悪役は淘汰され、一生懸命生きている人々はハッピーエンドを迎える。これは人間は弱くて、悪いところもいっぱいあるけど、最終的には神様が許してくれるっていう「観念」?

理由その4 気が長い
ラテンはホットな面もあるけど、時間の観念はどんぶりだし、気が長いんだよね。今どきの日本人は、いつも同じようなことやってて、半年も1年も続くドラマなんて、耐えられないもん。

それにしても、人間関係が超複雑で、気が遠くなるほど長く続く・・・というと、ラテンアメリカ文学の巨匠、ガルシア=マルケスを連想しませんか? テレノベラの原点はガルシア=マルケス的ラテンアメリカ文学にあったりして…。

関連リンク ガルシア=マルケス 彼、そしてテレノベラとの関連性

テレビサ!

テレノベラ製作といえば、メキシコのテレビ局テレビサが超有名。現地では、夕方4時から夜10時まで(6時からの1時間を除いて)ずーっとテレノベラを放映してます。で、つくったテレノベラをガンガン輸出しまくってる。ラテン圏だけじゃなくて、フィリピンなどアジア圏、アラブ、アフリカetc.,etc.,もうメキシコを代表する!?立派な産業です。

テレビサが製作するテレノベラの基本は、シンデレラ系。「貧しい女のコが突然、大金持ちのカッコいい男性に見初められ・・・」といった感じで物語がスタート。タリア は、テレビサからラテン世界にはばたいた、メキシコを代表する女優のひとり。

メキシコにはもうひとつ「TVアステカ」というテレビ局があり、メキシコの地上波テレビ界は、テレビサとTVアステカ2局の寡占状態。カナル11など他にもテレビ局はあるけれど、あんまり見られてないのね。以前は、テレビサの独断場だったけど、8年程前にTVアステカが開局して、競争が始まったそう。

だから俳優さんたちは、どっちかのテレビ局と契約するシステムになっている。日本のテレビみたいに、TBSで仕事して、次はフジテレビ…ってわけにはいかないの。その局のドラマに出ると、その局の「顔」になっちゃうから…ね。例えば、メキシコの有名女優LUCIA MENDEZは以前はテレビサと、現在はTVアステカと契約してます。

関連リンク タリア ルシア・メンデス


長〜いテレノベラの1シーンの謎

テレノベラはストーリーが長いだけじゃなく、1シーンも長い! カット割りが少なく、延々撮り続けるのです。「いったいどうやってセリフを覚えるの?」。そんな疑問に、コスタリカ在住のYさんが答えてくれました。

(以下、Yさんのメールより)

私は75年から77年まで2年間メキシコ留学(半年Guanajuato,残りDFで生活しました)、また89年から94年まではメキシコで仕事をして、96年から99年はマイアミで仕事、99年から本日まではコスタリカで仕事をしております。

メキシコのTelenovelaは、あまりじっくり見た記憶はありませんが、仕事の関係でTelevisaに出入りしていましたので、San Angelのスタジオ(ここはまるで京都の映画村みたいだった。 映画村って京都でしたね?)も,数え切れないぐらい行きました。 Televisaのtelenovelaは粗製濫造ですよね。

ご存知かもしれませんが、撮影現場に行くと、総ての俳優がイヤフォーンを着けています。(つまりいちいち台詞を覚えなくても、プロンプターが台詞を伝えているのです) Televisaのエライさんは、これを自慢してproduccion muy eficienteなどとノタマウのですが、ちょっと違うのではないか???

一度だけですが、Televisaの社長(たしか、なんとかAzcaragaというおっちゃんだった。もう亡くなられましたが,中南米有数の大金持ち)にも,仕事で会いました。しがない通訳としてですが)まるで,江戸時代の将軍か、はたまたどこかの大国の王様という風情でしたね。少しでも気に入らんことを言ったら許さんぞ!という迫力が漲ってました。メキシコで(いやいやメキシコだけではなく,中南米とスペインで)Televisaに逆らったら完全に干されます。(vetado) 現にLucia Mendezは今でもTelevisaとの関係を修復できていないようです。

(引用終わり)

骨肉の争いの背景には、スクリプターの声・・・。興ざめ? っていうより、そこまでして、長いシーンを撮り、長いストーリーをつくる意欲に恐れいりました。う〜ん、すごすぎる!!! 
(注:eficiente=効率的な) 

関連リンク テレビサ

 

1998-2000



旅行して、どんな人たちと会った? どんな体験をした? 何を感じた?
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