コロンビア人のともだちに、聞きたいことがあってメールしたら、数日後、知らない女性からメールが届いた。
「わたしの名前はイングリッド。あなたのともだちの同僚よ。彼女、今、バケーションでマイアミに行ってるから、わたしが替わりに質問に答えるわね。XXXっていうのは・・・」。質問にとっても詳しく答えてくれた。
イングリッドのメールアドレスは、ともだちのといっしょ。つまり会社では、メールアドレスを共用していたわけ。するってえと、わたしのメール、社員み〜んなが読んだのね、あらま。で、それ以来、彼女とメール交換するようになった。
最近、届いた彼女のメールには、こんなことが書いてあった。
「ゲリラと政府の攻防は、果てがなくて、コロンビアはどんどん疲弊していってるわ。失業率は高くなるし、経済は落ち込む。このわたしでさえ、国を離れることを真剣に考えてるの。コロンビアは大好きだし、バランキージャは相変わらずすっごく楽しいところだけれど」。
バランキージャは、コロンビアのカリブ海沿岸一の都会。この街のともだちのお宅を拠点にして、カリブ海沿岸地方を旅行した。
「たぶん年末になると思うけど、マドリードに移住する計画があるの。もちろん夫と子供と、家族みんなでね。詳しいことが決まったら、知らせるわ」。
彼女には会ったことはないけれど、わたしのなかにある(バランキージャの)コロンビア人のイメージと重なるところがある。他人宛に届いたメールの質問に、丁寧に答えてくれちゃうオープンさ!!!
バランキージャでも、ひょんなことから、ともだちの輪が広がっていったっけ。
ほんの10日ほどの間に、ビックリするほどの人たちと知り合った。「ともだちのともだち」「ともだちの妹一族」「ともだちのともだちの奥さん」「その子供」「その愛人!」「愛人の同僚」、エトセトラ、エトセトラ。
滞在してたお宅では、テレノベラも真っ青な夫婦バトルがしょっちゅう繰り広げられていた。あるときの原因は、旦那が生の魚を食べたこと。一見、セビーチェのように見えて、確かにおいしそう。旦那は、おいしいんだからいいじゃないか!とくり返し言っていた。
ほどなく、ご夫婦のともだちの女性が遊びに来て、冷蔵庫を開け、「それ」を発見し、止める間もなく、食べはじめた。いきなり他人の家に来て、冷蔵庫を開け、食べちゃうんだから、すごい。「それ、生よ・・・」。やっと口を挟むと、彼女は何とも言えない顔で言った。「ホント、生だわ。でもおいしい」。
しばらくするとまた別のご夫婦がやって来て、今度は薦められて、試食した。「あら、おいしいじゃない?」。「けっこうイケるよ」。
"YO SOY BETTY LA FEA"(わたしはベティ、醜い女)ってコロンビアのテレノベラが、ラテンアメリカ中で大好評を博している。アタマも性格もいいけど超ブスな主人公BETTYが、アパレル会社の社長秘書になって繰り広げる抱腹絶倒のコメディ。
マフィア、ゲリラ、麻薬・・・。そんなネガティブなイメージがあるけど、コロンビアは、豪快さと、突出したユーモアと、カオスが混在した、魅力的な国だった。
8月(2000年)、アメリカはゲリラ撲滅対策のため、コロンビアに13億ドルの援助を行うというニュースが流れた。
「コロンビアは、ベトナムになるのさ」
1年半前、バランキージャで、あっかるいラテンのライブを見ながら、ちょっと政治の話をしてたとき、コロンビア人が耳元で囁いた。言い終って、彼は口に手を当てた。
「アメリカからの援助を受けても、コロンビアは、ベトナムにはならない」
コロンビアの大統領、パストラナは明言したという。
コロンビアに行ってから、もう1年半が過ぎた。そのうち、少しづつ「よくなる」だろうと思っていたけど、ならなかった。コロンビアは、どうなっていくんだろう。ユーモアとパワーで乗り切ってくれるといいけど・・・。
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